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この構造を魔法瓶構造と称しているが、熱流を計算すると壁面外側の空気層の遮熱効果は大きく、この構造をすべての燃焼室壁に使うことが出来れば遮熱効率を80%以上にする事が出来る。

ヘッドライナーは、シリンダーの上部とファイヤーデッキを合体させ高温ガスの接触部にシール部を置かないようにしているが、遮熱により温度が上昇するのでその熱がシリンダーの下部に伝導しない工夫を要する。ヘッドライナーの下端には、ステンレススチールの薄板を10枚重ね、熱伝導率を小さくし、シリンダーへの熱の移動を少なくしている。

ヘッドライナーをこうした構成にすることにより、熱放散を大幅に低減することが出来たが、それでも全体の放熱量に対し60%以下の遮熱をすることは出来なかった。今後更に遮熱効果を上げるためには、ヘッドライナー上面部のガスケット板材の枚数を減少すること、伝熱面積を減少させる事が重要である。今後、そうした試験を実施し、放熱量を減少させる。

尚、FEMを用いて応力解析を実施した。計算に用いた境界条件は、解析図6.1に示し、結果を解析図6.2に示す。

 

(2) ピストン

ピストンは燃焼室の一部を構成すると共に、動力の伝導機構であるので、シリンダー内をスムーズに摺動する必要がある。燃焼室部分は遮熱構造でなければならず、摺動部分を低温に保ち、ピストンの往復運動をスムーズに行えなければならない。

従来、多くの研究者がピストン上面にジルコニアコーティング等を実施し、遮熱しようとしたが熱伝導率が小さくてもその厚さが小さいので、熱通過率全体を小さくする事が出来ず、遮熱効果は大きくならなかった。

本研究では、ピストンを上下2分割し、中間に遮熱材を挟み上面から下面への熱伝導量を大幅に削減しようと考えた。

先ず、伝熱面積は、ピストン上面積の1/5程度とし、上側ピストンと下側ピストンの接合面には、積層ガスケット10枚を配置した。また、上側ピストンヘッドと下側ピストンスカートの締結は、ピストンアッセンブリ中央に締結ボルトを設け、そのボルトで締結した。ボルトはダブルナットとし、弛みの発生を防止した(図6.2)。因みにボルトの断面積はピストン上面積の3%であるので、この部分から伝熱する熱量は極めて小さい。(写真6.2)

 

この構造体を持つピストンの熱移動量を計算した。ピストンの熱流を遮断しないとピストン上面から受熱した熱は、ピストンリング、ピストンスカートを通してシリンダー全体に分配される。シリンダーに分配された熱量によってシリンダーが高温度に上昇するとピストン、ピストンリングとシリンダーライナーの摺動上のトラブルが発生する。ピストンリング部の温度を250℃以下に低減させるため、ピストン上面と下面間の熱流を大幅に低減させる必要がある。ヘッドライナーの構造と同様にこの接触部分に0.5mm厚のガスケットを10枚挟む事により、その熱伝導率を10%程度まで低減出来れば、十分その目的を達成することが出来る。積層板の伝達については、西川等がその減衰割合について報告しているが、その報告によると一枚当たりの減衰率は80%〜90%であり、板材の表面粗さ、接触面圧の大きさ等によって、その量は変化すると結論付けている。

面粗度が良く、面圧が大きい場合、10枚組みガスケットの熱伝導率は35%に減少し、面粗さが粗く、面圧が十分均一でない場合、その値は10%になる。本研究では、先ず平板のガスケットでその性能を確認し、遮熱性能が十分でない場合、ガスケットの伝熱面積を更に減少させること、又はガスケット面に熱伝導率の小さい値を持つジルコニアコーティング等を施して、積層させる方法を試みる。

 

 

 

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