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そうすると結果として削減の義務がかかっていませんから、地球全体の排出量はもっと増えちゃうんじゃないかという議論もありますよね。

 

G だから日本の新日鉄でつくれば、あんまりCO2が出ないから、中国で鉄をつくればいっぱいCO2が出ますから、中国から輸入すれば出る量はもっと多くなる。

 

川口 現実政治がなかなかそういうふうに動いていないので。

 

司会 政策主体が現実問題としては減少していくよりないということとの割合をどうするかということですね。Gさんやっぱり役人より学者に向いている(笑)。

 

G いや、それを主張して頑張るとか、もし決められちゃったんだったらそれを使ってごまかすとか、そういうしたたかな役人には私はなれないと思ってますので(笑)。

 

司会 少し今日の話を通じて私が感じたことがあるんですが、発言を私もしましたように、このなかの何人かが「私は環境の素人ですが」という前置きで議論を今日始めているわけですね。実は考えてみると環境NGOといわれる人たちと、そんなにたくさん存じ上げているわけではございませんが、何人かと話していて感じるのは、その人もまた素人なんですよね。つまり申し上げたいことは問題意識はもっているんです。でも専門家ではないんですね。

さっきオゾンの話が出ましたが、あれをきっかけにエピストミック・コミュニティという言葉がずいぶん使われたんだと思うんですね。つまりエピストミック・コミュニティというのは、問題意識を共有する専門家のネットワークと訳されるんだと思います。これはやはりまさにオゾンの専門家たちが、技術者たちが、心配している人たちが世界でネットワークができてしまって、その人たちの意見が結局政府を動かしたわけですね。

考えてみたら実はAPECというものは、エピストミック・コミュニティから生まれたんだと思うんですね。PCCとかPPECとかいろんな人たちの専門家が問題意識を共有して代表して協力しようという人たちが生まれて、そういう何か仕掛けをもつことが実は日本のソフト・パワーにつながるのかなという気もするんです。考えてみると、日本でさっきちょっとIPCCの技術というかハードというのを、日本で環境のことをこの人に聞いたら何となくわかる、こういうのはまさにコンセプト・リーダーだと思うんですが、その人がなかなか思い浮かばないんですね。

ITの問題でもちょっと同じことを考えて、私は実は私の同僚の村井淳さんをいろんなところに引っ張り出して、彼が発言すると皆なるほどと、これもやはり彼がITバージョン6が重要でとこうこうだと、なるほどというようなことになって、やはりそういう技術の裏付けのある専門家、科学の裏付けのあるコンセプト・リーダーをまず国内でつくる。

 

 

 

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