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あるいはだから日本は6、アメリカは7、ヨーロッパは8になっているけど、それじゃあ十分日本のマージナル・コストを反映していないよとか、なんかそんなふうな議論は成り立たないんでしょうか。

 

川口 マージナル・コストでいきますと、日本はこれは国立環境研究所でやった研究で、トン当たり200何十ドルっていうのじゃなかったでしたかしら。

 

B いや、もうちょっと高いですね。

 

川口 もっと高いですかね。というようなのがあって、それはほかの国に比べれば圧倒的に高いという1つの研究はあります。それで先ほど申し上げた京都メカニズムというのは、マージナル・コストを等しくしよう、それに近い状況にもっていこうということであるわけですね。排出量取引ということですが。それは国際的に、先ほど申し上げましたようにEUを中心として、それから途上国もそうですが、アンブレラ・グループ以外のところでは、そういう発想はあまりありませんで、国内措置によって、しかも京都メカニズムというマージナル・コストを経済的な手段というのを無視した形で、そこに上限をはめて、国内措置でやらせようという動きがあるわけですね。

ですから国際政治の流れのなかで、どのくらい1国、国境が意味をもつかということであるんじゃないかなと思います。そういう意味で言えば先ほど申し上げましたように、EUはかなり自分で15カ国の国境をはずして、大きな舞台にしちゃっていまして、そういう意味ではマーケット・メカニズムが比較的通用しやすい仕組みを自分のところはつくってしまっていて、自分の外に対してはそれはだめよと言っているという、そういう図式であるわけですね。ということでして、なかなかそういう発想が現状で通っていないということなんですよね。

 

司会 Cさんの質問は大変重要なポイントで、2つの問題が混同しているんだと思うんですよね。発展途上国が、不信感を含めてですが、非常にリラクタントであった最大の理由は、彼らにとっては実はオポチュニティ・コストまで含めると、マージナル・コストは非常に大きいということになるわけですよね。将来の得べかりし成長の利益を奪ってしまうという意味で、そのあたりコストをどう調整するのかというのが、南北問題と考えれば実はそういう問題があるわけです。しかし一方で、アンブレラとEUの間にはむしろコストの問題じゃなくて、プレファランスの違いが基本的には価値観の違いが存在していると、そのあたりがミックスして存在しているということなんでしょうかね。

 

 

 

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