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それからもう1つ、EUの特徴は、環境派が非常に強い、それが先ほど言った環境インテグリティというという環境保全の考え方が前面に出ています。アメリカは他方で京都の議定書というのは、基本的に経済、貿易の問題だというふうに捉えているところが強いわけです。

従って、EUがよく主張していることを注意して考えなければいけないのは、緑の党、例えばドイツの場合は外務大臣もそれから環境大臣も緑の党の出身者であるわけでして、そういう緑の党の主張をどれくらい踏まえて発言しなければいけないか、それを必要とされているかという立場がEUにはあります。従って、表向き非常に強いことを言う、最後のところでは柔軟に対応できるかもしれない、これはできないかもしれませんができるかもしれない、そういう意味で緑の党、建て前がEUの発言にかなりあるということを我々としては認識することが必要であるということです。

私がEUについて危惧しているのは、最後の段階で時計を止めて、お互いに妥協し合って話をまとめていくような段階になったときに、EUは15カ国の会合ですから、1国のように、例えば東京に請訓して訓令をもらって、では妥協をするということが、そう簡単にはできないわけです。15カ国が集まって会議をして、それではこれ譲りましょうということになるので、あまり迅速に対応ができないのがEUの立場でして、もし15力国で話がまとまらなかったら、もとの建て前の厳しいところで主張しなければいけない。そういう意味でEUの柔軟性のなさというのを、私は危棋しております。

ですから、将来時間ができたときに勉強したらおもしろいと思うのは、こういう環境関係の条約をめぐってのEUのなかの政治的な動きというのはとてもおもしろいと思いますし、他方でアメリカがあれだけ強いNGOをもちながら、何でこれが経済、貿易の問題として捉えられているかというのが、勉強のテーマとしては非常におもしろいと思っております。それはおいておきまして、そういう違いがございます。ということでアンブレラ・グループ、EUグループはいろんなことを言っていますが、そのなかにそういう基本的な考え方の違いがあります。

この変動枠組条約と議定書の交渉グループのこの表を開いていただいたところで、少し今度の会合での途上国問題以外の大きな問題は何かということをちょっと申し上げたいと思いますが、2つ大きなテーマがありまして、1つは京都メカニズムという先ほどの柔軟性メカニズム、フレキシビリティについての考え方です。それからもう1つが吸収源をどういうふうに考えるかという、この2つが大きな柱です。

 

 

 

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