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そういう意味で南北問題が短期的な視点からも大事ですし、長期的に温暖化を防止するためには途上国が先進国と同じでなくてもいいんですが、ある種の削減にコミットしなければ気候温暖化を止めるということから、抑えるということからいいますとこの枠組条約は意味がないことになってしまう。

従って、長期的には、これからの問題は途上国にどうやって将来の削減に向けて前向きに取り組んでもらうかという、そういう舞台の仕掛けをつくることが大事だということであります。もちろん先進国としても途上国に対して、全く先進国と同じ義務を負ってくれと言っているのではありませんので、このレジュメのかっこ2に書いてありますが、common but differentiated responsibility の原則というふうに書いてありますが、これはリオ宣言にも出ていますし、気候変動枠組条約にも出ていますが、共通だけれどもさらなる責任に基づく気候の方というのを原則として考えているということです。

それで、ちょっとはしょりますが、その次にEUとその他の先進国の考え方ですが、大きく2つの点で違いがあるかなというふうにも思います。1つはマーケット・メカニズムをどれくらい生かすかということについての考え方の違いです。アンブレラ・グループというのは、市場原理を通して議定書の目的である廃止削減が効率的に達成できることの立場ということですが、民間企業あるいは全国民に参加をしてもらうためには、市場原理が通るようなことでないと長期的にそのシステムはもたない、という日本からいえば非常にもっともな考え方をしているのがアンブレラ・グループです。

それからEUはそういうことからいいますと、どちらかといえば市場原理というのを前面に押し立てていない、エンバイローメンタル・インテグリティ(Environmental Integrity)という言葉がありますが、環境保全が大事だということを全面的に出しているということが1つの違いです。具体的にどういうことでそれが出ているかといいますと、EUのほうの一番上のところに「京都メカニズムの使用は制限すべし」というふうに書いてあります。これは京都メカニズムというのは排出量取引ですとか、それから削減活動を途上国でやって先進国のクレジットになるというCDMといわれるクリーン・デベロップメント・メカニズムですとか、それから先進国同士でそれをやって削減活動をやるという共同実施ですとかそういうことですが、基本的に京都メカニズムの役割というのは、国内で省エネ等で削減をする、あるいはフロンを減らして温暖化ガスを削減するということで、コミットしたことが十分できない場合に、柔軟性を与えるメカニズムという位置付けということです。

 

 

 

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