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この報道は100年で1.8度から3.8度高くなるということで、この前の報告書をさらに上方修正をしたということです。新聞には、氷河期末期にみられた気候変化を上回る6度の上昇が起こり得るとの見方もあるというふうにありますが、最終的にまだ私は見ていないのでわかりませんが、そういった報告書が出てきている。これは今度COP6を、この報告書が正式に出るのは実は来年の春のことでして、今それぞれの政府および関係者が、レビューをしているという段階のようですが、こういう段階で例えばこういう情報が出てくるというのは、科学と政策決定との間の、お互いに科学の客観性を維持しつつ、政治の側ではそれを使いたいので使っていこうという力の綱引きの過程でこういうことが出てくるということではないかと思います。

一般的に環境の問題では科学的知見が最初にあって、それから政治につながるということはずいぶん例があることでして、一番典型的な例は、オゾン層の破壊です。これは、理論的にオゾン層の破壊があり得るということが表に出たのが70年代の終わりですが、それでその後調べてみたら実際に理論的にいわれているよりもはるかにオゾン層の破壊が進んでいたということがわかって、85年にウィーン条約ができて、87年にモントリオール議定書が採択されたということでございまして、これもそれも科学的知見に基づいて政策がとられたということです。

このほかにいくつか例がありますのは、ヨーロッパの協定が70年代にできていまして、これが硫黄酸化物等の国境を越えた移動が問題であるということで、そういう知見があって、それに基づいたその政策ができたという話もあります。今の日本でこれは環境庁なんかが中心になってやっていますのは、東アジアの酸性雨問題というのが、これから重要な問題であるだろうということで、関係国が10カ国ぐらい集まりまして、東アジアでの酸性雨についてそれぞれデータを今協調して調べているという段階にあります。これもいずれそういう知見が十分に出て関係国の合意があれば、政治的なプロセスに転化し得るものであると思っております。

そういうときに物の考え方としてここに1つ出ているのが、予防原則の考え方ということでして、気候変動枠組条約では、予防するということが文言として入っているわけでごさいます。

 

 

 

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