これまでは全省庁で大蔵省の主税局と国税庁が分離しているだけです。強いて言えば、警察庁と地方の県警本部というもの。それから、防衛庁の内局と制服。これも強いて言えば、現場と企画立案が分離しているんだと言ってもいいかもしれません。あとは、大体日本の行政というのはみんな同居している。ほとんどの政治家も国民も、それがいいことだ、当然だと思っているんです。
そこを何とか切ろうということであったのが、たまたま大蔵省の金融行政の失敗、要するに、住専の問題で出てきたわけであります。それから、厚生省の薬務局のエイズの非加熱製剤の問題が出てきで薬務局の中で検査と薬業界の監督を一緒にやっているわけですから、ああいう事件が起こるのは無理もない。そういうようなことで、これをてこに何とか改革しようということで、いろいろ考えたのであります。
しかし、金融監督庁だって、ここにも書いておきましたが、企画立案と実施機能がまた行った先で同居してしまっているわけです。それから、もう一つ大きいのは、エネルギー庁であります。エネ庁も、公益事業、電力、ガスなんかの監督と、いろいろな監察機能と一緒になっておりますから、この二つは今後に問題を残したなと思っております。
話を進めますが、現業を分離するために考え出したのが、独立行政法人であります。
これは、実はこの間まで金融担当大臣をしていた柳沢さんが言い出した。柳沢さんは、「これしかないですよ」と言うわけですね。当時は、社会党と一緒に行革を始めたわけでありますから、首切りは御法度です。絶対しない。橋本さんもそれを総選挙後の施政演説でぶってしまいました。そうすれば、どうして外へ出すのか、アウトソーシングする手法に独立行政法人しかないということです。幸い平成8年の総選挙のときに自民党の公約に入れてありました。当時はエージェンシーと言っていました。何のことかわからないものですから、自由党内も、各省庁も、誰も反対しなかった。
平成8年の5月頃でしたが、橋本総理の部屋に行ったら、変な「外庁」なんていう名前はだめだよと、必ず選挙になると攻撃されるぞというので、そこで、エージェンシーという名前をそのままで使って、日本人というのは片仮名に弱いんで、銀座のバーや喫茶店はみんな片仮名のように(笑)、それでいきましょうということで、エージェンシーと入れた。そうしたら、そのまま自民党の公約に入ってしまったんですね。すーっと入れておいたら当時行革が優先されましたから、公約の前の順位にうまく入ってしまった。