ただ、現在のプロセスというのはあくまでも一時的なプロセスにすぎないということで、戦略的な変化ではありませんし、あるとすれば、単に行動上少し変化が起こっているというだけだと思います。
司会 ほかにございませんか。
B 先生の今のご説明と、先ほどの日本の援助は北朝鮮の民主化及び市場経済化の進行状況に応じてインフラに援助をしていけばいいという話の関係でお聞きします。
結論から言いますと、今の北朝鮮は行動面で少し変化しただけで戦略ストラテジーは変わっていないということだと、日本が非常におかしなポジションになるのではないか。つまり、日本の北朝鮮への援助は、北朝鮮の現在の政権が崩壊する方向に進めば援助をするのだということになるのではないかという気がいたします。
日本の南北統一に対するポジションというのは基本的には南北朝鮮の問題で、その間において日本が出しゃばる話ではない。ただ日本が心配するのは、南北朝鮮の間で軍事紛争が起こる、あるいは北朝鮮が自壊して難民等が出て韓国が混乱して、その混乱がさらに日本にスピルオーバーしてくる。そういうのが日本の一番心配するところです。
南北が合意して一緒になるのは結構ですし、東西ドイツの例もあるので難しいから一緒にならないのならそれも結構です。これは完全にニュートラルだと思います。
そのときに、援助の話について、おそらく南北は日本が国交回復の話をすればその時点で援助の話を決めないとだめだと。その場合に援助を条件つきにすれば、日本は口には出さないが北朝鮮の現政権の崩壊を前提としているというのはおかしなポジションになるのではないかという気がするのですが。
キル これについては、それぞれ北朝鮮接近を図っているわけですが、日本のみならず韓国及び西側諸国も同じようなジレンマを感じていると思います。
そして、暫定的であるにせよ、暗黙の了解として今のところ北朝鮮が即崩壊してしまうということは想定していないということです。そんなことを想定してしまうと、とてもコストが高くつく、難民も大量に発生するということで、そんなことになれば韓国も経済的にも社会的にもとても受け入れられないほどの甚大なコストになるということはわかっていますので。
北朝鮮がゆくゆく崩壊してしまうのか、歴史から少しずつ消え去っていくのかはさておきまして、当分は南北朝鮮が平和的な共存ができるような状況を見出していくということになると思います。