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今回、日本が北朝鮮政策を通してこれまでの小切手外交から訣別するいい機会にもなるのではないかと思っています。今現実に考えてみますと、短期的な形で北朝鮮が十分対応力を持ってがっぷり四つに組んで交渉をする相手というのは日本しかないわけです。日本が唯一信頼できる相手国ということになるわけです。

というのは、とりあえず北朝鮮が欲しているものを提供できる力を持っているのは日本しかないからです。韓国はたとえ人道的な支援であるにせよ、またその他の経済支援があるにせよ、とても財力はかなわないということで、そういうものを提供できる立場にはありません。

アメリカはもちろん役割を果たすことはできますが、とりあえず、アメリカの果たす役割というのは北朝鮮が短期的に望んでいるものを満たすような役割ではないということです、北朝鮮が短期的に望んでいるのは経済支援であり、協力であり、投資であり、これらを提供し得るのは日本ということであります。

ただ誤解しないでいただきたいのは、北朝鮮を関与させるという政策について全面的には支持していないというということです。93年の北朝鮮の核問題が出てきて以来、もちろん私自身統一担当大臣のアドバイザーを務めてまいりましたが、どちらかというとマイノリティー(少数意見)の方で全面的な北朝鮮を関与させるという政策については少しちゅうちょの念を持っていたわけであります。

もちろん、南北首脳会談が行なわれた後よりフィジビリティーの高い政策だというふうに私は思うようにはなりましたが、北朝鮮から一体何を獲得したいのか、何を引き出したいのかということは見誤ってはいけないと思っております。関与させるというスタンスと政策上ねらう目標というのは混同してはいけない。はっきりとそれぞれ意識を持ってあたらなくてはいけないと思っています。

朝鮮半島全体であれ北朝鮮であれ、我々として望むのは、まず、より民主的な社会に北朝鮮がなることであり、市場経済をベースとしたシステムにない軍事的な脅威を減らしていくということです。

そして、いずれ統一される南北朝鮮が押しなべて民主的にマーケットを経済ベースとして域内で友好的な隣国になれるようにするというのが目標ですから、この目標を達成するために関与政策についてもきっちりとスピード等を調整して進めていく必要があると考えています。

 

 

 

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