それでは、今後日本は北朝鮮戦略を練るにあたって何を勘案したらよいかを10点にまとめてありますので、急いでそれをさらっていきたいと思います。まず、多くの日本の学者の方、官僚の方というのは、日本政府ははっきりとボトムラインを提示すべきだと。すなわち、北朝鮮政策について、日本としてはこれは絶対に譲れないという最終のぎりぎりの線というのを最初から提示したらいいのだという意見がありますが、私はその意見はいいと思っておりません。
というのは、日本はどうしても安全保障上の対応ということになると限界があるわけですし、日本が安全保障問題についてより深くより歯に衣を着せぬ形で言いたいことを言ってしまえばしまうほど、日本はがんじがらめになってしまって、北朝鮮ですとか他国と2国間であたるときのフレクシビリティーを失ってしまうという構図に置かれているからです。
もちろんボトムラインは何なのかを内部で討議することはいいわけですし、その内容をアメリカに伝えることはいいわけです。アメリカはあくまでも主役を演じているわけですから。しかしながら、これは絶対に譲れないといったような形で最初から日本の譲れない最終的なぎりぎりの線を提示してしまうというのは、私が見るところスマートなやり方とは言えないと思います。
それでは、北朝鮮のミサイルの脅威というのを正常化交渉を行なうにあたって全面に押し出したらいいかどうかということですが、私としては全面に押し出さない方がいいと思っています。というのは、今度は安全保障となると日本はあまり力を持っていないわけで、日本はあくまでもアメリカの安保の傘にいる。そして、日本の持っているミサイルは別に北朝鮮に照準を合わせているわけでもないですから、どうしても北朝鮮の脅威というのは、日本にとってはアメリカを介してのみ解決可能な問題でありますので、核の脅威ということはあまり全面に出さない方がいいかと思います。
また、北朝鮮もまさしく言っておりますように、ミサイルを管理するという国際的なレジームというのは確立していないわけです。かつミサイルの開発及び配備の問題というのは主権にかかわる問題でありますので、隔壁とは違うということです。
ですから、ミサイルの脅威というのは一応あるということで、正常化交渉の中でテークノート(示唆)くらいはしてもよろしいかもしれませんが、ほかにある障害と前列に同列で最初から提示するようなものではないと思っています。