2〜3ページにまとまりました私の講演のアウトラインが配布されていると思いますが、まず現状について少し申し上げたいと思います。
まず朝鮮半島において地域的な戦略上の脈絡が変わってきたのか否かということでありますが、確かにコリアの問題が現在コリア化されたということは既成事実としてあると思います。すなわち、2つのコリアが自らの問題について自らの手を持って解決しようという気運が既に確立されているということです。
すなわち、コリアの問題についてだれが主導権をとっているのかということなのですが、去る6月、南北間の首脳会議が行なわれまして、さらにコリアの問題がコリア化されたということが顕在化してまいりました。
1993年以来北朝鮮側の核の問題が発生し、これがみんなを悩ませたわけですが、このとき北朝鮮を相手に交渉で主たる役割を果たしたのはアメリカでした。ですから、アメリカにその意欲があろうとあるまいと、常にアメリカというのが主役を演じていたということです。
現段階で北朝鮮の問題について牛耳っているのはだれなのかということになると、まだはっきりとはしておりません。韓国の世論を見ておりますと、去る6月の南北首脳会談以来2つのコリアが自らの手でコリアの問題を解決していくのだというふうになっておりますが、現実から考えますと、この南北首脳会談が今後の北東アジアの戦略にどのように影響を与えたのかということも大きな問題になってまいります。
第2に、地域内で変わってきたものがあります。まず南北朝鮮の関係というのはこの数年間「触媒的」な役割を果たしまして、国際的にもまた、アジア諸国、なかんずく域内の戦略について洗い出しをするということを迫ってまいりました。そして、南北首脳会談以来、現状を維持することは結局はできない、つまり現状維持というのが既成事実にはならないということがわかったわけです。すなわち、今まで見慣れてきた現状を今後維持していくことは難しいであろうということです。
北朝鮮の方もこのごろは外交カードを積極的に使うようになってまいりまして、西側諸国に対しての北朝鮮側の外交政策には目を見張るものがあります。以前の文明国、また西側諸国に対して積極的な攻勢に出ております。そして、現状が維持できないのではないかということは、現在主要な先進国、特にアメリカが北朝鮮に対してできるだけ近づこうということでやはり攻勢をかけているということにも起因しております。