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それから、当面の状況をみますと、やはり国会、立法院がらみの問題ではなかなかやりにくい部分がありますから、例えば立法院が絡んでこない部分である人事とか、あるいはそれ以外のイシューにおいて、徐々に陳水扁色を出していこうとしているのではないか。民進党は緑をイメージカラーにしていますので、台湾ではよく「緑化」という言葉が使われるのですが、そういったものをじわじわと進めていこうとしているのではないか。目にみえて何かはっきりとして急に変わったというわけではないのだけれど、4年過ぎてみたら結構脱国民党化が図られていたというような戦略をもっているのではないかと思います。気付いてみればというのでしょうか。

あとそれと絡んで「緑化」の話なんですが、国慶節が先日行われましたが、そのときの総統府の周辺の雰囲気というのもこれまでの国民党のカラーとはやはり違うものであったという話を知人から聞いております。小さいところからそんなふうに始めて、だんだん脱国民党化を図っていこうとするのではないかという気がいたします。

 

司会 どうぞ。

 

D 台湾の内政と外交についてですが、陳さんが当選しても、内政的な面での改革が多くて、中国との関係についてはあまり問題がないというように思われましたが、そのへんはいかがでしたでしょうか。

 

松本 いいえ、私自身の捉え方は決してそうではありません。初めに申し上げましたように、彼の当選というのは激震が走る事態であったわけですが、外交問題の中心といえる中国との関係では、とりあえずは事態をうまく沈静化してきたんだろうと思うのです。

実際、ここしばらく、中国でも九中全会が開催されたり、あと朱鎔基首相が日本に来たり韓国に行ったりということもありましたし、またアメリカも大統領選挙を控えているなど、こういった状況もある意味で幸いしたのだと思います。政治対話においては変化がみられずに、いわゆる構造的な不安定な状態が続いているのは確かなのですが、しかし、陳水扁の当選直後の、あのときの一体どうなるんだろうといった状況からみると、中台関係はやはり沈静化した状況が続いてきたといえるのではないかと思います。ですから、この5ヵ月足らずの時間をみる上で、中国というファクターが大きく内政に働いたとはそう感じられないといえます。

 

 

 

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