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つまり、立法院で国民党が多数を占めるという状況において、長年の議会生活を通じて養われた人脈を生かして、円滑な政策運営を進めるということが、彼には期待されているといえるわけであります。

次に副院長の頼英照氏ですが、台湾の報道によりますと、陳総統自らが彼を口説いたそうであります。政局の安定と経済発展という方針を打ち出した新内閣にとって、彼が経済方面での実務経験を持っており、その行政手腕も高く評価されていること、それから無党派の立場を貫いており、しかも各政党との関係も良好であるということが重要であったといえます。彼は国民党時代に財政部の関税司長を務めまして、さらに次長に抜擢されております。その後台湾省政府に活動の場を移すのですが、当初財政庁のトップを務め、親民党の党首である宋楚瑜氏が台湾省長を務めていた時期には、その信頼も厚く副省長に抜擢されたほどの人物であります。つまり、無党派という点では「全民政府」という条件にも合致しているし、また新政府の経済面での威信回復、それから各政党間の政治的なバランスを図る上でも、彼は理想的な人材といえるわけであります。

3つ目のポイントは、秘書長に就任した邱義仁氏であります。これは先ほど触れました国民党の魏啓林氏を更迭する形で、彼をその後任に据えたものであります。彼は民進党員なんですが、党内では新潮流派と呼ばれる派閥に属しております。実はこの新潮流派といいますのは、これまで党内で「陳唐体制」を最も強く批判してきたグループであります。従いまして、この人事政策によって、新潮流派も行政の責任の一端を担う形になったわけで、党内における新潮流派の発言にも今後変化がみられるのではないかと考えられます。

そして、もう1つ体制全体をみたときに重要なことは、この3人の人事を通じて総統府と行政院、それから民進党との連携もスムーズになるのではないかと思われることであります。行政院長の張俊雄氏と民進党の主席になりました謝長廷氏という人物は、いずれも福利国家派といわれる同じ派閥に属しております。また邱義仁氏は民進党の秘書長である呉乃仁氏と同じく新潮流派の人物であります。つまり、このような人事をみますと、経済優先という路線への修正、それから政局安定と経済発展といった目標が明確に反映されているとともに、これまでの「陳唐体制」の下でギクシャクしてきた総統府、行政院、それから与党との関係がよりスムーズな形で連携が図られるように編成し直されたといえます。

 

 

 

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