日本財団 図書館


そのために行政院の中枢に国民党ラインというものか存在したといえるわけで、やはり陳水扁氏も手綱さばきが非常に難しかったのではないかと思われます。

そのほか、陳水扁氏は唐飛氏を首相に指名した際に、国民党に対しては事前の相談なしにこれを決めてしまいました。また国民党との連立についても、陳氏自身が「全民政府」は連合政権ではないのだと主張してこれをかたくなに拒んでいたために、国民党側も行政院長は党員の唐飛氏であるけれども、彼を必ずしも支持するとは限らないというような立場をとってきたわけであります。

さて、このような背景の下で政局の不安定といった状況が続くわけですが、そのなかで第4原発問題がかなりヒートアップし、さらには唐飛行政院長の辞任という事態に発展いたします。第4原発と申しますのは、国民党政権時代に建設が決まっており、すでに着工も始まっております。これは国営の台湾電力公司が台北県の貢寮という土地に建設中でありましたが、民進党政権が発足してからはその建設が中断されていました。

この問題では、民進党は原発建設に反対という立場をとっていましたし、また陳水扁氏も同様の主張の持ち主でありましたから、新政権発足後3ヵ月以内にその建設を続行するか否かに関する意見を行政院に提示するということで、再評価委員会というものが組織されていたのであります。そして、この再評価委員会の報告の意見の取りまとめの最終期眼となっていたのが9月15日でありました。ただし、この時点では統一見解がまとめられておりませんで、通産大臣に相当する経済部長の林信義氏もその意見をまだ未定であるという立場をとっておりました。

ところが9月30日、この林信義氏が経済部の報告書という形で、第4原発の建設中止を求める意見書を唐飛行政院長に提出したのであります。この報告書では、第4原発の建設は続行しない、そして北部地域の電力不足については、民間に天然ガス等の発電を開放することによって不足分を補うという代替案が示されていました。そしてこの時点で唐飛氏は、この報告はあくまでも経済部の見解であって、行政院のものではない、行政院は10月の末までに、あるいは遅くとも11月には行政院としての最終決定を下すということを明言していました。さらに、10月3日には、唐飛行政院長は立法院の質疑において、彼個人の見解として建設続行の立場を述べていました。ところが、その日の夜唐飛氏は記者会見で、陳水扁総統に健康不安を理由に辞任を申し出て受理されたと発表したわけであります。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION