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さらに、陳氏が選挙期間中に掲げた「三三三福祉法案」という公約の実現を目指した老人手当ての法案は否決されてしまいました。この「三三三福祉法案」といいますのは、65歳以上の老人に対して月3,000元の手当を支給する、3歳までの乳幼児の医療を無料化する、そして初めて持ち家を購入する人に対して3%の住宅ローンを提供するという、いわば福祉拡充策でありました。ところが、その柱であった老人手当については否決されてしまいまして、その代わりに国民年金を来年から導入するというような話になりました。しかし、これについても政府内部ではまだ統一した見解がまとまっておらず、まだめどが立たないといった状況であります。

このほかにも、例えば陳氏は中央研究院の李遠哲氏を中心に「超党派グループ」を結成し、これにより対中国政策のコンセンサスづくりを行うと表明していたわけですが、実際にこのグループが組織される段階になりますと、国民党と親民党は早々に不参加を表明しました。この新民党とは、今回の選挙で国民党を飛び出して無党派で立候補した宋楚瑜氏が選挙後にその支持者を集めて結成した政党です。その親民党と国民党がグループへの参加を拒否したのは、すでに政府には大陸委員会、それから李登輝時代につくられた国家統一委員会というものが存在するのに、また超党派グループをつくるというのは二重構造を生むだけであって、そんなものに参加する必要はない、というのがその理由であります。結局、この超党派グループには、国民党から若干名が個人の資格で参加したにとどまり、親民党からの参加者はありません。

その後、先月の後半からは立法院で新たな会期が始まりまして、そこで先ほど触れました国民年金の問題や、あと来年度予算の問題が議論の焦点になると思われたのですが、結局その予算案は本会議に出すということも実現せず、政局の不安定という状況が続いたのであります。

このような状況に対して、一番敏感に反応したのがやはり経済でありまして、特に株価であります。株価につきましては、陳総統が総統に就任した直後には台湾の株価指数である加権指数が9,000ポイントを上回っていました。ところが、9月半ばには国民年金問題でその財源どうするかという問題をめぐって、企業の営業税に1%程度上乗せしようというような課税の議論が出てきたり、そしてまた第4原発問題をはじめ政権の足並みがますます乱れてきたことに、株式市場は非常に強く反応しました。株価の下落は速度を速め、一気に7,000ポイントを切るという段階にまで達したわけであります。

 

 

 

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