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なぜかというと、これもさっきの話と同じなんですけど、経済活動の影なんですよね。統計って影絵を見ているんであって、影絵を影絵と見ていればいいんだし、影絵がおかしな動きをしたら、本体がおかしいんだと思って、公定歩合を上げとけばよかった。だけど、記事はやっばりそうじゃないんですよね。あたかも実態がそうであるかのごとく書くという、日本的ジャーナリズムのリアリズムがあるもんですから、まるでマネーサプライがインフレをつくっているがごときことをふと考えたり、マネーサプライがこうだからまだインフレじゃないなという話と、本当は違うんですよね。本当は違うんだけれど当時の新聞を見れば、毎月必ず載っていますから今有力な資料ですよ。

まあ、昨日2日銀が反省したって言うんだから、反省すればいいんだけど、しかし、1つはじゃあマネーサプライを今でも新聞に書いているかというと書いてない。日経さんのような専門紙は書いてあったとしても、毎日新聞ぐらいだとほんの情報欄にマネーサプライはこうだと。じゃあ何なんだ、あのときの熱狂ぶりは。これも、そのときのそれこそそこでインフレ利益を得ている人はそれを一生懸命読んでいたということは実はあまりないんだけど―マネーサプライのわかっている人は不動産屋だったということはないわけですから、それはないんですが―じゃあなぜ書くのかというと、結果的に違ったことが昨日わかりましたが、やっぱりマネーサプライを見て、日銀は金融政策を発動するであろうという、実態の話ではなくて、権力をもっている。日銀に権力があったかどうかは別にして、日銀が権力を発動するときに、しかも日本的な社会において、例えば政界とか何かとうるさいところを説得するのに便利な指標を、日銀自身がつくりあげて、それを判断している。それを基準にいつ公定歩合を上げようかという判断材料にしているに決まっているから、毎月毎月書くわけですよね、この論理は。

書いている人は決してマネーサプライは即インフレを示すものだと思っているわけでもないんです。発表する人だってそう思ってないんですから。では、マネーサプライ騒動というのは今終わっていたとしても、その最も厳しいものは日銀短観ですよね。

 

2 本セミナーは、2000年5月31日に開催された。

 

 

 

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