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もちろんそんな記事ばかり書いているわけではないんですが、そこのところから外れてしまうと、だれも興味のない話を長々と書いているという、載らないという話になってしまうんですね。そこのところがね、例えばこの雑誌は環境問題について関心が薄いとか、そういうくくりの話と違うんですね。環境問題については削ってでも、儲かっている企業の話がこんなに載っていると、載せなければならない。それは売りたいとか売りたくないということではありません。やったからといって売れないことはいくらでもありますから。

しっくりとこないんですよ、人間の気持ちに。このことを普通の人は言いません。そういうアドバイスというのはどんな偉い人でもないんでよ。何でかというと極めて下品なことなんですね、やはり。だから偉い人とお話しすると、「ロンドンタイムスはこうだよ」とかって話になって、それはそうかもしれないんだけれど、そんな話を聞いているといつまでたってもしっくりしない記事ができてしまって、しっくりしない雑誌ができてしまって、わけがわからない。

何でユニクロは儲かっているんだと。ちょっとしたファッション性とどこか安いところでつくっているという綿製品の特徴でしょうね。そこにはいくつかのからくりがあって、それはこれからの経済社会にとっても、とてもいいことなんだけれども、しかしやっぱり大きな関心事ですよ。それに比べて、じゃあ何とか造船は全然儲かっていない。どっちに価値があるかというと、まずどんなに大きな設備とどんなにたくさんの人間を使ってでも、儲かっていない人はだめなんですね。

そうすると、たくさん儲かっているという人に対して、超過利潤が発生しているよと、嫉妬に満ちたニュース観に打ち勝つものは何かというと、倒産なんですね。この2つしかない。この2つに従うことこそ経済ジャーナリズムです。あの井原西鶴には『日本永代蔵』など超過利潤と倒産を扱った小説がいくつかありますが、ああいう名文家が、文学的な匂いも込めて、歴史の中でこの儲かる、倒産するという2つの事象を日本国で残してくれたのは誠にありがたい。もしあれがなかったら、ただの下品なニュースの集積に過ぎない。

 

 

 

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