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これは、価値観の話をしているわけではありません。例えばどういう現象が起こるかと言いますと、京セラという会社が、今、稲盛さんだというとDDIですが15年前は京セラですよ。京セラって何の会社なんだと疑問に思う。そうすると半導体関連ではありますが、半導体を入れるセラミック製の箱のメーカーですよね。だから、何でそこが儲かるのかというと、そこにボトルネックがあるから高い値段で買ってくれるわけですよ、世界の半導体メーカーは。で、それは一体いくらでできているんだろうというと絶対言わないわけですね、これは。

クレザンベールと言いましたか、あの宝石。イナモリジュエリーはどこの工場でつくっているか言わない。まあある工場の一角でつくっているんでしょうけどね。本来結晶体になってくるものですが何かちょっと違う結晶になる。見た目は同じ。で、大儲けしている。

それは、多分原価は極めて低いものだと思うんですね。調べたわけじゃないから、人に迷惑がかかるから言いませんけど。でも、とにかく本物の宝石との価格の比較でみると、やっぱり買う価値があって、そこのところに激しい需要があって、そこで蓄積が起きる。それで、彼は通信事業に出た。そうすると不思議なことに、今は京セラ本体のことについて忘れてしまうんですよね。じゃあ京セラ本来のことをしつこく覚えていて、原稿を書いてくる記者がいるとして、その記者を褒めるかといったら褒めないんですね、これ。多分いるんです、そういう人がまた。どこで勘違いしたのか知らないけれど、まじめな人なんですよ。

だけどそうじゃない。人間の関心というのは、儲かっているところにしか向かない。二千何百社の上場企業についてを全部書いていられませんし、それほど単純な理屈でもないんですけど、平均的な利潤を上げている会社には、さほどの関心が向かない。

決算時期に、新日鉄なら新日鉄、3行、これで終わりですよ。ずうたいが大きい分小さな動きでも小さい利潤の動きでも大きな影響かあって、あらゆるものと付加価値の分かれ目になりますから、それは書くべきときには書きますが。しかしそれは新聞に書かれるから思い出すようなものです。私はこの話をするときいつも、何で人間そんなことわかるんだろうと不思議に思います。哲学的、心理学的な話になってしまうからしないんですが、多分人間は嫉妬心と、欲望、この2つで、「誰が普通のやつより儲けているんだろう」ということを、「もしかしたら悪いことしているんじゃないか」ということまで含めて直感的に感ずる猛烈な能力があって、ほとんどそれに従って行動するという機能をもっていると思うんです。

 

 

 

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