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何遍もそんな話ばかり聞いてきましたが、そうは言っても現実につくっている側からするとそうもいかないんですね。

商品ですから人気がないとやっぱりだめですから。そうするとどこの国の商業新聞でも同じだと思いますが、つくり手が「何か」を選択してつくっていることだけは、これはもう間違いがない。その会社の経営が非常に楽であれば普遍的なものを選ぶかもしれないし、経営が苦しければセンセーショナルなものを選ぶかもしれない。違いはありますが、ベースにある論理みたいなものは実は変わらないんじゃないかという問題と、そこのところを知っておくと新聞も読みやすいし、また「新聞がこんなこと書いてない」というようなことのお叱りを受けることも、幾分減るんじゃないかという意味で、ちょっと1時間ばかりお話をしたいと思います。

ただここで申し上げるのは、こういう記事を書けと若い記者に言っていることでもないし、自分をこれで叱咤激励しているわけでもありません。また、現実に「エコノミスト」という雑誌をつくっていますんで、いろんな方々に原稿をいただいているんですが、こうじゃないから原稿が悪いと言っているのでもありません。

ただ、もしも皆様方が論文を書かれるような場合に、私の言ったことが経済記事を読む時のヒントにはなるという気はいたします。それから雑談調で話せるということを言ったのは、要するにこのことがそもそも論理としてまとまっていないからで、新聞のつくり手としては、経済関係の新聞、雑誌のつくり手としては、結構言いたくない話をしているのも事実です。一種の弱点ですから。

だから、こうした形でこういう弱点を言うという機会もあまりないと思いますので、まあ聞いてください。独断と偏見なんていう言葉がありますが、じゃあお前はそういうつもりで全原稿を書いてきたかというと全然そうじゃない。日常的にはいろんな原稿を書いてきているんで、おもしろいこともつまらないことも書いているんですが、やっぱり長い目で見てみると落ち着くところはこれなんだなと。この幅から新聞の記事というのではなかなか出ないなという、何て言うんですか、記事に平均はとりにくいけれども、理念という言葉も使いにくいが、そういう一種の枠組みみたいなものの中で、長らくこの商売をしていると、「ああ、こういうふうにしないと商業新聞はつくれないんだな」みたいな、ちょっとそういう意味で聞いてください。

最初に、経済記事において何がニュースなのかということを考えましょう。政治記事というのは、誰が権力者かということなんですね。

 

 

 

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