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しかし、将来の関与はもっと経済的に合理的なベースでやらなければいけない。そして、関与の形でも、最大限、北朝鮮に対してそれを変貌させるインパクトを与えるようなものに重点を置くべきだと思います。

 

J 岡崎研究所のJです。吉先生にお尋ねしたいことがございます。先ほど来、この部屋においては、戦後賠償のことがさも当然であるかのような、将来的にはすでにもう決まっているような表現がされていますが、その戦後賠償のことについて、日本のお金の出し方について、韓国の側で何か条件をつけたいということはございませんでしょうか。例えば、われわれが国際政治をやるとき、最初に教科書で学ぶことの中の1つに、ガバメントリジティマシー(government legitimacy)というのがございます。その政府が国民からどのような支援を受けているのか。つまり、ポジティブであろうかネガティブであろうか。パッシブであろうか。その差を問わず、アクセプタンスがどれほどあるかということを問われるときに、一番原始的なものというのが、ナショナリズムに訴えて、リジティマシーを獲得するというやり方がございます。少し発展すると、経済の発展で生活水準を上げるということに訴えてリジティマシーを獲得するという方法もございます。さらに進化すると、アメリカのように、カルチャーということについてのリジティマシーを問う場合もありますが、今の場合、北朝鮮に関してはかなり低いところにいるというのが現状であると思います。

さて、ナショナリズムに訴えるとなると、外部に何らかの脅威があると言わざるを得ない。それによって身内を引き締めるということをやらざるを得ないというわけです。また、本当に外部に脅威があると信じているかもしれません。そういう低いレベルといいますか、ナショナリズムに訴えたリジティマシーをもっている北朝鮮に、日本政府がグラントなりレンディングなり、お金を出すということは、彼らがそれをイクスペンディチャー(expenditure)のほうに向けてしまう可能性が非常に高いわけです。

先ほど来、200億ドルという話もありましたが、私が聞いている話だと、日木円に換算すると、1兆円という話も聞こえてきます。今の北朝鮮のGDPというのは1兆円ぐらいしかないわけですから、その1年間分を差し上げるということ。それが10年間になるかもしれませんが、レンディングという形で縛りをかけるならば、ある程度回避できるでしょうが、1965年の韓国と日本の間の基本合意のときは、すべてがレンディングだったわけではございません。一部グラントが入っています。

 

 

 

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