1つは、北が相変わらず主権国家として存続するのか。そして、北から南への人々の移動を制限できるかということです。もし北が主権国家として続く、そして、北から南への移動を制限することができれば、非常に大きな所得格差が、南北でその後長期にわたって続くことになります。つまり、非常に緩慢な北の経済変化ということになります。しかし、北が崩壊する、主権国家でなくなってしまう。そうなりますと、北朝鮮の人々の南に移動するインセンティブはきわめて大きくなるでしょう。
その意味するところは、北朝鮮が主権国家として存続するというケースですが、経済復興はより少額で試みることがてきるであろう。北が破綻する場合には、より多くの資金を北に投入しなければいけないし、迅速に投入することによって、経済の改善を確保していかなければならない。つまり、北朝鮮の人たちが北に留まるインセンティブとしてです。ですから、数千億ドルうんぬんというようなことになります。
第8章で私はその点を議論しましたが、もっと目先の可能性で考えますと、第9章で私が推定しているのは、年間の財政支出、北がぎりぎり存続できるようなレベルで維持していく国際市場で必要な食糧を確保し、エネルギーも買い、医薬品等、自らは供給できないようなものを確保する、スペアパーツも介入するための資金を考えた場合には、年間で、大体10億から20億ドルぐらいかかる。さして大きな額ではありません。つまり、北朝鮮のサバイバルパッケージは結構安く買うことができるという話になります。これは、毎年考えられる資金需要です。
それから、北の経済あるいはインフラを復興するため、そしてまた北が成長するために必要な資金のストックはどれぐらいになるのか。輸送システムとか電気通信とかいろいろなインフラがありますが、その想定によって違いますが、大体300〜500億ドルということになりましょうか。
ですから、毎年お腹を何とか満足させるために必要な金額として少額がある。そして、これから先、インフラを立て直し、経済成長が実現できるようにするために必要な資金としてもっと大きいのがあるというわけです。
さて、その資金負担の分担ですが、簡単なところから、その後はDさんがだんだん心配するような話になりますが、国際金融機関を使うという話があります。私は、昨日まで実はソウルにいたわけですが、雰囲気は全く違って、非常に前向きです。