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北朝鮮がそういう考え方をとっていけば、アメリカ、韓国に対して、例えば、平和協定を結ぶ。つまり、休戦協定から平和協定に移るということで、半島の兵力削減の話をするでしょう。そうすると、アメリカ、韓国からある程度資金を得ることができるかもしれない。そういうアドバンテージがある。

つまり、兵力削減のための金をくれるかもしれない。あるいは、コストをまかなってくれるかもしれない。ドイツと旧ソ連の場合、例えば、旧ソ連の兵撤退のために、住宅を建てるということを、ドイツはやったわけです。そういった物質的なことをやるかもしれない。

それから、第2に、通常兵力の削減の話をすることによって、米国の駐韓兵力の撤退という話ができるかもしれない。だから、北朝鮮は限定的な抑止力を維持し、それと同時に通常兵力を一定削減する。それによって、平和への配当を確保するということも考えられましょう。ただ、これは空想にすぎないよというかもしれません。北朝鮮は相変わらず、半島の共産化を狙っているんだ。だから、こういうのは日和見主義であって、彼は、あくまでも金をもらったら軍の近代化に使って、それによって、兵力増強に使うだけなんだとおっしゃるかもしれません。私は、しょせん、心理学者でありませんので。

 

吉 サミット後の金大中大統領の一番誤った発言の1つは、「戦争は終わった。半島ではこれ以上戦争はない」と言ったことです。これは、一番間違った発言だと思います。彼は精神科医なのかもしれませんが。半島で戦争があるか否かというアプローチではなくて、金正日氏のチャレンジ、あるいはジレンマ、要するに、自らの軍にどう対処したらいいのかという問題が重要なわけです。

これは、どのような体制のもとであれ、軍というのは同じようなポジション、同じような気持ちをもつわけであって、金正日が限定的な経済の開放を行い、そして、ハードカレンシーを得ようとする。その一方で、国際社会からの大量破壊兵器に関する要請に応える。金正日はそのためには、軍と一定の話し合いをしなければいけない。軍に対してハードカレンシーを与えるとか、あるいは、一定レベルの抑止力を軍に保持させるというような対応が必要となってくるだろう。それが金正日のジレンマです。自分の軍部にどう対処するのかというジレンマを抱えています。

ただ、現時点の北朝鮮のリーダーシップは、いわゆる平和の配当を味わうようなぜいたくは亨受できないのだろうと思います。

 

 

 

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