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99年8月、9月に起こったことも非常に重要だと思います。覚えていらっしゃるかどうか知りませんが、99年8月、北朝鮮は、明らかに第2回目のミサイル発射の準備をしていました。そして、北朝鮮のマスコミは、毎日のように日本を非難した。そして、戦時賠償あるいは植民地支配に対する賠償をしろと言って、日々ミサイル発射の威嚇をしていたわけです。ある日の新聞だけを取り上げても、そういうことが言えるわけです。

日本がそういう威嚇に屈伏することを拒んだため、では北朝鮮は次善の策はどこなのかと、探さざるを得なかったわけです。その次善の策というのは、アメリカとのミサイル協議を再開するということだったわけです。そして、その代償として求めたのが、米国の経済制裁を解除するということだったわけです。彼らの結論としては、大規模な経済投資を得て経済を再建するためには、その投資の一番大きな潜在的なソースは韓国だということを、判断したのではないでしょうか。

ですから、日本が99年8月、9月に、北朝鮮の威嚇に屈伏しないという対応に出たということが、その後の北朝鮮の対応の決定を呼んだといえます。

それから、今おっしゃった政治的な理由というのは、おっしゃるとおりだと思います。97年12月、金大中氏が選出されたとき、北朝鮮のプロパガンダは本当に静かでした。以前でしたら、北朝鮮は、南の政権は傀儡だ、ファシストだうんぬんと、常に悪者にして、罵詈雑言を浴びせかけたわけですから。

しかし、金大中が、北朝鮮が一番求める人間であり、そして、彼がファシストに対抗して選挙に勝つことかできれば、南の政権のカリカチュアはできなくなってしまう。ということで、北のプロパガンダは非常に静かだったわけです。しばらくの間、どうやって対応していいのか、いろいろと考えたと思います。彼らの最終的な結論は、もし何らかの経済的な関与を南とやるのであれば、恐らく金大中ほど協力的な大統領を期待することはできないだろうと判断した。だから、行動するなら今だと判断したのではないでしょうか。

同様に米国との関係について言えば、2001年1月に就任する政権は、この問題については現政権よりももっと強硬な路線の政権になるかもしれないと判断したと思います。

ですから、北朝鮮の考えとしては、経済は惨憺たる状況であるので、何かしなければいけない。しかし、アメリカや日本から経済を安定させるに足るだけの資金を得ることはできない。だから、南に期待しなければいけない。南の政治的な状況は、非常に協力的であり、好ましい。

 

 

 

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