1つ言えるのは、何が本当に起こっているのか、ピョンヤンの宮殿の中で何が起こっているのかと考えますと、しばしば私が思い起こすのは、韓国の60年代、70年代の大統領の状況であります。朴大統領は、経済的に非常に成功したリーダーでしたが、軍部独裁のリーダーでありました。彼の場合には、優れたアドバイザーたちがたくさんいました。場合によっては、アドバイザーたちが競争し合っていたわけです。
そういう中にあって、朴正煕大統領はしばしば誤った情報を得ていました。ですから、常に忠誠を誓った人々の間で競争がありました。軍部の中でも、より重要な立場を取るために競争があったのてす。こういったところから、私はしばしば学んでいます。
伊豆見 最初に申し上げましたように、ご質問を最初少しにいただいて、それからあとはコメントをいただくディスカッションと、ちょっと分けてやりたいと思いますので、まずご質問のほうをいただきます。Bさん、どうぞ。
B 時事通信のBといいます。北朝鮮はこれまで南の、韓国のことを傀儡政権として無視してきたわけですが、この傀儡政権と対等の首脳会談を開くということが、どうして可能だったのか。その辺が理解できないので、その分析を教えていただきたいと思います。経済的な理由だけで韓国が突然傀儡政権でなくなるということは、まずあり得ないと思うので、北朝鮮は金大中政権について、傀儡度が薄れてきたと考えてきているのか。つまり、金大中政権が従来の韓国の政権より自主的な政権の度合いを深めてきたと考えているか。もしもそう考えているとしたら、私が考える理由は2つぐらいありまして、1つは、朴正煕政権の影を引きずっていた金鍾泌とか朴泰俊とかの、朴正煕系の首相が、すでに政権から去ったということです。それから、金大中の太陽政策が、従来の韓国政権の中で最も親北的な政策である。そういうことから、北朝鮮は金大中政権について、もはや傀儡政権ではないと考えるに至って、首脳会談に踏み切ったのか。その辺の北の政治的観点からの首脳会談に応じた、あるいは、首脳会談を決断した背景をどう理解するか。お考えを聞かせていただければと思います。
ノーランド 経済と政治をこの点で分けることはできないだろうと思います。まず、経済の面から言いますと、北朝鮮は非常に深刻な経済問題を抱えている。外国からの経済支援を必要としている。ただ、その支援にも限界があるということを、彼らは感じ取った。米国との関与を通しても、彼らが期待していたような経済的なメリット、例えば90年代中ごろに期待していたようなメリットを得ることはできなかったということです。