これは2つのことを意味しています。まず第1に金正日はますます軍部に依存するようになってきている。第2に、彼は、学習のための制度的なメカニズムを持っていないのかもしれないということです。草の根レベルで国民が何を考えているのかを知るよしもないのかもしれません。長期的には、これは、政治的な不安定性ということになるかもしれません。その示すところは、リーダーが、実際に国民レベルで何が起こっているのかということからかけ離れてしまっていて、力を使って自分の支配をやっているだけにすぎないのかもしれません。
吉 簡単に2点だけ申し上げます。ヒッチコックあるいは、ウッディ・アレンとは違いますが、金正日氏は自ら監督をし、俳優もやりましたが、金正日氏は、常に主役だったということで、ヒッチコックやアレンとは違う面があります。われわれはいわゆる彼のパーソナリティとリーダーシップは区別すべきだと思います。最初から私が強調しています点は、父親が亡くなって以来、いわゆるアブノーマルな性格、アブノーマルな生活自体が、誇張されて伝わってきたと思います。そして、われわれは、金正日氏をリーダーとしてまず考えなければならないと思います。
私は、彼の意思決定のスタイル、あるいは、金正日氏の政権の経済決定のプロセスに注目をしています。ノーランド博士がおっしゃいましたように、金正日氏は、制度化された学習の道というのは持っていないのかもしれません。しかし、父親とは違って、私が見るかぎりでは、異なった形での意思決定を学びつつあるようであります。
幾つかの組織がそれぞれの問題を踏襲し、そして、自分のデスクの上に情報をいろいろなところから持ってこさせる。そして、それを分析する。さらに、そういった関連の組織自身がお互いに競争するようにしむけている。そして、最終的に幾つかのオプションが出てくる。そして、彼は、それぞれ組織にオプションを実行させるということです。
私は個人的には、各組織間、例えば、北朝鮮外務省と軍部との間に対立があるというような考え方は、必ずしも正しくないと思います。私が思うのは、外務省においても、一部の外交官はよりリベラルなところと関係があるかもしれない。あるいは、軍部とより強い関係があるかもしれない。あるいは、労働党とより緊密な関係がある人がいるかもしれない。ですから、各組織間の対立関係ではないと思います。これは、私の金正日氏のやり方に対する見方です。