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私の想像では、彼は彼の国の経済が破綻しかけているということをわかっており、何とかこれを復興させなければいけないということをわかっている。吉博士がおっしゃいましたように、彼は亡き父親が持っていたような政治的な正統性は持っていないかもしれません。そして、彼の正統性というのは、結果をもたらすことによってのみ強化されるということも事実でありましょう。だから、何かしなければならないわけです。

しかし、彼はしばらくの間、内部コントロールを強化しようということで、時間をかけてきました。伊豆見さんはその専門家ですが。どうも国内的な権力を確固たるものにし、国内的な自分の立場に自信をもつことができるようになったので、今度は外に向かって広げよう。そして、ある程度リスクのある行動に出たのではないかと思います。

ただ、念頭に置いておかなければいけないのは、サミットはすでに94年に金日成主席と当時の金永三・韓国大統領との間で予定されていたのです。ですから、これは内部的には金日成の希望を実現させたものと映るかもしれません。

金正日氏が今後数年の間にとるであろういろいろなアクションは、金日成の望んだことなんだというふうに言われるかもしれません。父親が長年にわたってこういう話をした。あるいは、父親が昨晩夢にあらわれてこう言ったというようなことで、利用するかもしれません。いずれにしても、自分のアクションを金日成の満たされぬ希望を満たす方法なんだという形で、やっていくかもしれません。

最後のアドバイザーに関して、だれかということを私が知っているかというご質問でしたか、私は知りません。先ほどとは別のアメリカの情報担当者たちが、私に言ったことを申し上げるしかありません。彼らの情報は、ポルノの情報と同じくらいの質なのかもしれませんが、彼いわく、金日成は、労働党を支配する上で、政府を使った。ゆえに、彼の決定が下に向かって、すなわち、実行するに当たってのメカニズムとして、草の根レベルでしみわたるように使った。それと同時に、朝鮮労働党は、その草の根から中央に情報が渡ってくる上でも使われたということです。すなわち、決定を普及させると同時に、人民の考えを知る。草の根で何が起きているかという感触を知るためにも使ったということです。

アメリカの情報担当者たちが言っているのは、朝鮮労働党はだんだん弱体化しているということです。決定を伝達していく手段として使うのではなく、金正日は今小さなグループの人たち、特に、軍部を使って実際の政策の実現をやっているということです。

 

 

 

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