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朝鮮半島の将来はバラ色という考えではありません。だだし、6月の南北首脳会談のあとこの会談は非常にうまくオーガナイズされ、そして、この金正日氏が監督を務め、非常に手際よく行われた会談ですが現在の状況を、いわば真新しい経験から考えていく。北朝鮮の状況は非常に破綻に近いという悲観的な考え方から、そして、根拠もないような考え方から、明確な、前向きの図式に変えていくことができるといえます。

ただ、これは、全く新しい図式というわけでもありません。なぜならば、常に、いろいろな変数もありますし、変わらないものもあるわけです。それから、幾つかの基本的な想定があって、それは、ここ数年間、あるいは、ここ半世紀とさして変わらない想定としてあるわけです。

まず、不変なものとしては、北朝鮮にとって外からの援助が死活的になっているということ。しかも、今後もこういった援助が必要であるということがあります。それから、第2に北朝鮮の軍事的脅威は、そう簡単に交渉によって片付くものではないということがある。なぜならば、北朝鮮は相変わらず、軍事的能力があれば、生き残るためにそれを使うことができると考えているからです。体制あるいは政権ということだけではなく、社会主義体制という観点からも必要と考えている。それから、第3に、金正日氏のリーダーシップの問題があります。皆さんは少々見解が違うかもしれませんが、私自身は、金正日氏は彼の父、金日成とは違っていると思っています。つまり、亡き父とはだいぶん違い、亡き父はカリスマがあったわけですが、今の北の指導者、金正日氏は、彼の指導力をパフォーマンスによって立証しなければいけない。そのために、金正日氏としては、どうしてもこだわらなければならない点があるということです。

それから、幾つかの新たな変数があります。それによって状況が変わる。1つは、ノーランド博士もおっしゃいましたように、韓国は、北朝鮮にとってのアドバンテージになっている。つまり、韓国経済が北朝鮮ならびに南北関係にとって、これから先さらに重要性を帯びてくる。韓国が外国資本、投資あるいは外国企業を北朝鮮に誘致していくための、非常に重要なきっかけである。一方、韓国は自ら能力を超えて北朝鮮を支援することによって、共倒れするようなことがないようにしていかなければいけないというのが1つの変数です。

それから、第2の変数は、韓国の国内政治に関するものです。私は個人的には、現政権の南北関係に対応していく能力については、非常に懐疑的です。本当に懸念を抱いています。

 

 

 

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