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ところが、北朝鮮の場合には違います。朝鮮半島は分断されている。北朝鮮は規模からいってもまた行政からいっても、弟分です。そして、ピョンヤンの指導者にとって、このチュチェの思想を、これが市場開放なんだ、そして、韓国、日本へエクスポージャー(残高)をもっと広げることを意味しているんだ、と説得するのは難しいわけです。そして、現在の王朝的な政権の資質がゆえに、これはもっと難しい。金正日氏は、父親の道をたどらなければいけないからです。だから、北朝鮮は、もっと難しい政治的な問題に直面していると言えます。経済改革を導入するに当たって、中国、ベトナムより難しい状況にある。ですから、1つは経済、1つは政治的な障害があると言えます。

では、大きなアドバンテージは何なのか。これはもちろん韓国です。いわば、北朝鮮には、“シュガー・ダディ”と言っていますが、南にこういったアメをくれる人がいる。東ドイツを除いて、あるいは中国を除いて、こういったアドバンテージを持っているような移行経済はなかったわけです。北朝鮮にとっては、韓国の企業が技術を持っている、資本も持っている、世界的な流通ネットワークを持っている、そして北朝鮮に投資する用意がある。また2次的には、日本企業もそういった利点を持っている、青写真を持っている、世界が買いたいような商品を知っている、資本も持っているし、全世界的な流通ネットワークを持っている。だから潜在的な北朝鮮経済の可能性を利用することができる。そういった意味で、北朝鮮は非常に大きなアドバンテージを持っています。もし、改革の道をたどるとすれば、どういったものでしょうか、どういった目的で、北朝鮮はその利得を経済改革に置くでありましょうか。

例えば、北朝鮮の人々の物質的な欲求を満たすようにするでしょうか。あるいは、他の目的、すなわち軍事近代化などをやるでしょうか。不確実です。よくわかりません。金正日氏及び、そのアドバイザーたちが彼らにとって、権力を維持し、そして北朝鮮制度の中における自身の特権を維持するためには、エンゲージメントの、関与の政策を徐々にやっていく。そして、その立場を守る、経済を開放する、近代化をする、そして、ある種の国際社会との関与を進めていく、ある意味のよき市民的な役割を果たすということによって、彼ら自身を温存することができるメカニズムをつくるかもしれません。

あるいは、またこれは全くオポチュニスチィックな日和的な考え方でありますが、実態的に北朝鮮がやろうと決定したのは、経済改革の技術を活用するけれども、しかし、その価値は活用しないということです。

 

 

 

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