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すなわち、何らかの改革あるいは開放政策をやって、そして、もっと資金を獲得しよう。しかし、改革自身はやらずに、軍の近代化にその資金を使ってしまい、現在の軌道をそのまま進んでしまうというやり方です。

答えは何でしょうか。あるジャーナリストが私に聞きました。金正日氏は何を考えているのかと。

私が言ったのは、「私は彼に会ったことはないんだ。第2に、私が職業訓練として受けたのは、エコノミストとしての訓練であり、心理学系じゃないんだ。精神科医ではないんだ。だから、金正日が何を考えているかはわからない。ただ、私の訓練はあくまでもエコノミストである。そして、エコノミストであればわれわれは何をやるか。われわれは資金の流れを追う。彼らが何を言うかではなく、お金をどう使うかを注目するんだ。そうすることによって、その政権がどういった価値観、どういった目的をもっているかということはわかる」

申し上げたいことは、少なくともここ1、2年、私が見た限りでは、この点に関しては、あまりいい方向にはいっておりません。北朝鮮が昨年どういう形でお金を使ったでしょうか。韓国銀行の北朝鮮経済が昨年改善したという報告があるにもかかわらず、北朝鮮はますます国際食糧援助に依存しています。

北朝鮮に入ってくる食糧で、国際社会から支援の形で提供されるシェアを見てみますと、94年にはゼロだったものが、現在は85%から90%に上っております。ということは、食糧援助が定全に商業的な観点から食糧を輸入するということを放棄させてしまっています。誰かがただでくれるのなら、何も金を払う必要はないではないかという方向にいっているわけです。

ほかの言い方では、いわゆる経済モデルを使ってみますと、食糧を与えるということは、いわゆる対外収支の支援と同じであります。国際収支の支援と同じであります。

ということは、北朝鮮は、食糧輸入に使うべきだったお金を何に使っているのでしょうか、この1年を見てみますと、かれらは空軍部隊を買いました。パイロットは入っていません。また、最も値段の高い軍事演習をやりましたが、夏、冬、この数年、まれに見るほどの士気の高さでした。

また、より多くの、距離のいわゆる中立地帯を攻撃することができるような武器を買いました。

 

 

 

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