特に外交という話をしたときに、大上段にふりかぶりますと、外交というのは相手との協調政策と対抗政策のバランスが必要です。特に、今の日本は対抗政策の部分を非常に精緻化しています。ガイドラインの問題とか、戦域ミサイルの問題を精緻化している。私はこれは正しいと思います。ただ、その対抗手段と協調手段のどちらかだけが先行すると、国家間の関係は崩壊していきます。対抗手段を精緻化していくのであれば、協調手段も同じように精緻化していかないといけない。
では、その精緻化していく対抗手段に対し、協調手段の新たなシンボルとして日本に何があるか。ここが大きな問題です。日本が持っている最大の協調手段はODAです。年間1兆円を使っています。中国に5年間でもう1兆円使いました。ただ、ODAの金額的な拡大は限界であり、仮に1兆円を1兆2,000億円にしたとしても、効果が飛躍的に拡大するとも思えません。ですからODAの内容を変えていく、事業の質を変えていく、そういう必要があると思います。さらに、これも使われなかった外交カードですが、例えば北朝鮮と交渉していく上で、日本の外務省はもっと、例えば境港市などが持つ北朝鮮とのパイプを使うべきだったと思います。しかし、日本の国内では地方の問題は自治省、外国の問題は外務省という非常にがっちりとした線引きがあってつながりません。
次に、2つ目の質問に入ります。日本のイメージなのですが、Bさんがおっしゃったとおり、中国側は自らの政策として、正確に言えば、自分たちの求心力を高めるために、確かに今国有企業改革で厳しいけれども、この中国をつくる上で私たちはどんなに苦労したのかを国民に思い出させるために、日本と戦った、そのとき日本人が何をしたか、どんな状況で戦ったのかということを繰り返しテレビで流します。中国の政府では、そういう反日的なことをしていないと言うわけですが、実際テレビを見れば、レベルの低い反日戦争ドラマが多くあります。
ただ、それに関しても、地方自治体というのが非常に有効なカードになります。具体的な話で申し上げますと、中国の東北地区はかつて満州と言われた地域です。実は、日本のODAはその地域に集中し始めています。日本政府も、北朝鮮やロシアの極東のことを考えると、やはり中国の東北地区の安定がとても大切ですから、集中します。しかし、2年前だと思いますが、中国の中央の指導部で批判が出ました。日本のODAが東北に集中しているようだけれども、それは満州国の再来ではないかという人たちがいます。