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その後欧州連合(EU)を形成していく中で、EU相互の姉妹都市交流が盛んになります。現在はEUが拡大していますが、まずEUが拡大する可能性のある地域をねらって、姉妹都市交流を結んでいきます。そして、国民の理解が進んだ時点で、EUに統合していく、非常に組織的な政策手段として使われています。

現在、北東アジアでも、韓国が自由貿易地域をつくろうとしています。日本でも、特に第2次世界大戦でまだ強いしこりが周辺国に残っている。このような状況下で姉妹都市交流が果たす役割は非常に重要だと思います。特に日本の戦後処理は不完全でした。それを補完するためにも、ドイツとフランスの間での姉妹都市交流のような、戦後処理として憎しみを除去し、相互理解を促進することで関係を立て直すような姉妹都市政策が、政府レベルでもあればと強く期待します。

つまり、地方自治体は、独自にやればいいというのも確かに一理ありますが、国家として、政策として使える可能性もあります。政府は、そういう側面も追求すべきではないかと思います。なお、現在自治省では、組織面以外に財政面でも支援しています。地方交付税、それから自治体国際化協会では、協力モデル事業、地方公務員の派遣事業などをやっています。

それに対する外務省ですが、財政面での支援をやっています。研修員の受け入れ、専門家の派遣などです。また、国際協力事業団でも、研修員の受け入れや、専門家の派遣をしています。さらに、最近注目すべき点はJICAが昨年から実施している「開発パートナー事業」です。これは、委託事業としてNGOや大学・地方自治体と国際協事業を実施していくものです。これは、非常に金額が大きい。1件当たり5000万円〜1億、そこまでいかないにしても数千万単位の事業です。ただ、外務省の中でもいろいろ意見があり、やはり地方自治体の国際協力は一段下だ、地方は地方、政府は政府という考え方が強い気もします。

このような状況下で、外交政策はやはり総体としての外交政策が必要になってくると思います。地方自治体の可能性、特に、例えば前述の相手側住民に直接届くODAの実施、そして周辺国との和解、もしくは周辺国と自由貿易地域をつくる上での相互理解を進めるための外交カード、さらに国交のない国に対する2枚目、3枚目の外交カードとして重要である。従って、国家としての外交政策の中に地方自治体を位置づける必要があると思います。

 

 

 

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