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「国家益」については従来の政府。「地域益」については地方自治体、「国民益」については非政府機関、NGOが利益代表グループとなると思います。

1.(2)1)で、黒く反転している部分、「人類益」、「地域益」、そして地方自治体、非政府機関、これは北東アジアではこれまでなじみのなかった利益代表グループです。この辺で大きな変化が出てくるのではないかと思います。

このような変化を予兆しながら外交政策をつくっている国が、既に幾つか存在します。例えばEU、オランダとドイツ、そしてカナダです。これらの国々では、国家そのものの定義が揺らいでいるために、より多くの民意を吸収することで外交政策をオーソライズしていく努力が始まっています。政府が中心になって、国際機関や地方自治体やNGOの利益を調整し、1つの総合的な政策をつくる動きがあります。

しかし残念ながら北東アジアでは、この変化はまだ明確ではありません。ただ、それを予兆させることはたくさんあります。例えば「人類益」、これは人権です。それから「地域益」、例えば中国の台湾・チベット問題です。さらに、日本でいえば沖縄などの地方自治体がどう変化するのか、私は強い関心を持っていいます。

理屈はこのぐらいにしまして、具体的にどうなっているのかお話ししたいと思います。レジュメの2.日本における自治体外交の動向というところをご覧ください。日本の国内では、地方自治体の国際活動に対して認識が非常に甘い、不当に評価が低いと私は思います。実態を調べずに、単なる議員さんたちの往来ではないか、宴会だけではないかというステレオタイプのイメージが日本の国内に定着しています。しかし実態はそうではありません。

まず、概要から見ていきます。姉妹都市交流の部分を見てください。これは98年4月1日現在の数字です。自治体国際化協会の統計によると、98年4月1日現在で、全国の3,300の地方自治体のうち、39の都道府県と832の市町村が1,304の姉妹都市提携を結んでいます。つまり、全地方自治体の3分の1が姉妹都市交流を行っていることになります。

地域別には、第1位がアメリカで30%、第2位が中国19%、第3位がオーストラリア6%、第4位が韓国です。環太平洋地域に集中しています。さらに注目すべき動向は、2位の中国、3位のオーストラリア、4位の韓国は急速に増加中です。以前は対米を意識した姉妹都市交流が主流でしたが、最近は、中国やオーストラリア・韓国に対して、目的意識の強い姉妹都市交流が急速に増えているといえます。

 

 

 

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