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少なくともハード面では誰にも負けない状況があったし、産業面で見ればバブルの時代までは、Japan as No.1と言われて、それから没落して、日本は最高だと言われていたにもかかわらず、どうして、バブルがはじけて日本が低迷している間に、アメリカではこういう革新が起きつつ、日本では動きが出てこないのか。アメリカではだれがアイデアを出し、お金を出しているのか。その背景が違うのではないかと思うのですが。

 

緒方 そうですね。私の個人的見解ですが、やはり大きかったのが、ゴアさんの「インフォメーション・ハイウェイ」など、アドバルーンを上げて産業界を引っ張っていったというのがあると思います。もう一つは、KPのサイドファンドに、例えば、スコット・マクニーリーが入っているように、ベンチャー企業で成功した人たちをうまく活用していることがあると思います。日本のベンチャーキャピタリストと呼ばれているような企業は、一般にお金のことはわかるが、ビジネスのことはわからない。ところが、アメリカのその立場の人は、自分が成功した、それを次の世代に伝えたいというようなところがあって、単にお金を出すから儲けてよではなくて、こいつに賭けようとか、お金を出すときにそういう意思表示をしているわけですね。

日本は、盛田さんとか、稲盛さんとか、大川さんとか、ビジネスを興して成功した人たちが、損得を抜きにして、そういう人を育てていけるような形になっていなかったのかなと思います。自分たちの会社の中でいろいろとやることはできたけれど…。社外重役のような制度の問題があるのかもしれませんが。自分で儲けたお金を投資して、そいつを育ててやろうとか、仕掛け・仕組みが、制度的になかったのかなという考え方があります。

もう一つ、なぜそれができなかったのかといえば、例えば、ベンチャー企業が自分で会社を興して億万長者になれるという、仕組みがなかったということもあるでしょう。成功している人は日本にもたくさんいらっしゃるのですが、その人たちの知恵、ノウハウが、どこかに隔離されたというか、社内に納まってしまったのではないか。ソニーの盛田さんなどは非常に異例な方で、いろいろな業界、団体等で活動されていますが、一般に日本のベンチャーとして成功された方は、自分の会社に納まって、外に出ていかない。そういう人たちを、もう少しうまく日本の財産として活かせるような。知識は財産なのですから。

 

 

 

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