実際、Red Hat社が株式を公開する時、それまでボランティアでソフト開発をしてくれた人たちに、IPOでの株を分けるという話がありました。ほとんどが若くて、あまりお金のない人たちですから、これで億万長者になれると喜んだのです。しかし、これが、古い経済との摩擦なのですが、証券会社が若い人は過去に取引き実績がないと拒否してしまった。これに対して、ボランティアの開発者たちは強烈な不満を証券会社に訴えたという話があります。ボランティア経済であっても、証券会社に過去の取引関係や実績を重んじる部分がまだ残っていたので、そこに移行できなかったということです。
先日もMicrosoftの独占認定が出た時に、Eric Raymondが、「非常に複雑だ。なぜかというと、これだけLinuxが脅威と言われていながら、Microsoftの独占に影響を与えていないと、裁判所に認定されたようなものだ。Microsoftが独占禁止法に抵触していると認められたことはうれしいが、Linuxの脅威を裁判所が認識していないのは納得できない」とコメントしていました。これを見ても、まだまだ過渡期と言えると思います。
ビジネスモデルの二つ目の役割ですが、大手企業中心ではなく、中小企業・新規参入企業中心ということを申し上げました。一例として、KPという会社を中心にした「系列」を取り上げてみます(資料19頁)。このKPはクライナー・パーキンスといいまして、アメリカのベンチャー・キャピタリストです。この図に挙げた会社は、すべて、KPが設立したものです。これ以外に、バイオ関連の会社等にも出資しています。
注目していただきたいのは、去年の11月に、NetScape社をAOL社が買収しました。さらに、この買収に絡んで、Sun Microsystemsがハードウェア供給等の複数年契約という形で提携関係に入っています。NetScapeもAOLもSunも、図で明らかなようにKPのファミリーです。この発表がなされた時、「NetScapeという、ブラウザで一世を風靡した会社が、あのAOLに買収されて…」と嘆いた方も多かったのですが、この図を見ると何のことはない、系列内の企業再編なのです。KPはこういう先進企業にずっと出資していて、これらの会社を「系列」と呼んでいます。ホームページにも漢字で「系列」と書いてあり、その系列の社名の中に、これらが全部出ています。
NetScapeをAOLが買収したのは、企業の特定部門が統合されたようなものです。これは単に出資するだけではなくて、KPのパートナーがいくつかの会社のボードメンバーにもなっていて、こういう人間的関係も絡んでいます。それから、年に1回、KPファミリーの総会があります。