日本でも、松井証券が店舗を廃止して、オンライン証券取引だけを特化するという話も出てきています。これも、サイバー型のビジネスに変わるということの例です。
それから、今までは、下請け・納入業者と言っていたのが、「パートナー」の位置づけになってきました。これが「バリューネットワーク」です。今までは、商品・サービスの提供者だけが、下請け等から物を仕入れて提供するという形態でした。これが、全体がパートナーとしてサービスを提供するという形に変わってきています。ある場面では、物をデリバリーするという「バリュー」を提供する企業、またコンサルテーションというサービスの形で「バリュー」を提供する企業、問い合わせに応ずるなどのサービスを提供する企業、など、これらのことがネットワークで提供される形に変わってきている。
最後になるのがこの「顧客自身のコミュニティ化」という顧客自身の変化であります。顧客自身が、一種のコミュニティ化してくる。今までの物理的なコミュニティとは違う、ネットワーク上のコミュニティに変わってくると考えられます。実際、そういう部分にかなりの力点を置いてこれからビジネスを展開しようとしているところもあります。
これ(資料8頁)は、慶応大学の国領先生が描かれている絵です。ビジネスモデル設計上の今までの制約条件、ボトルネックという表現をされていますが、それを、ITが取り除くことができる。それによって、新しいビジネスモデルが設計される。新しいビジネスモデルの設計は、また新たなボトルネックによって決定されてくる。すると今度は、ボトルネックによる限界を突破すべく、技術の開発が行われて、新しいビジネスモデルができるということを国領先生はおっしゃっています。
ITというのが、IT産業であれ、その他の産業であれ、ビジネスモデルを変革する。それによって、新しいビジネスのやり方が出てきて、それが新しい制約条件を生み出す。今度は、それを技術が改善する形で産業自体が変化していくというサイクルになります。国領先生のこのモデルでも、ビジネスモデルがキーワードになっている。つまり、ITを考える場合の一番大きなポイントは、この「ビジネスモデル」にあると考えます。
それでは、ビジネスモデルとは何かということですが、それは、金の流れを中心とした事業のモデルを指します(資料9頁)。金の流れという以上、商品・サービスを誰に提供するのかという「顧客層」があり、次に、収入を得る相手が誰かが問題になります。