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そういう道具としてNPOを見ているというふうなものもあります。これが複雑に入り組んでいるのが、NPO法をめぐる大きな現状でしょう。

それぞれNPOに期待していることが全部違うというのが今の現状で、これは英国と米国の状況というのもそれに当たるんだろうと思います。米国は、どちらかというと後者。市民主権・多元的価値観の社会という傾向が強かった。特にこの10年ぐらいを見ているとそうなんだろう。一方、イギリスに関して言えば、民営化路線の中でNPOがかなり位置づけられてきて、ここ数年、イギリスのNPOの状況というものを見ていると、行政からの委託契約でNPOは経営がほとんどになってしまったために、行政に対しての提案能力が落ちた。政治とNPOとのかか割というのが非常に問題になってきている。

ブレア政権は、今、政治とNPOのかかわりを見直そうという作業に入っていて、今年、コンパクトというものが、イギリスで大きなボランタリー団体の連合会とイギリス政府とで結ばれますが、それはお互いの責務に基づいて役割分担をきっちりしていこうよということで、どうも委託事業をやっていくために、政治的発言力が落ちてくるのは社会全体としてよくないんじゃないかという提案を受けた、お互いの権利を決め合うような内容だと聞いています。

ただし、そのコンパクトがいいのかという話なんですが、先々週ですか、イギリスの内閣官房調査官に当たる人が外務省の招きでシーズを訪れて、若干、意見交換をしたんですが、まだ不十分である。日本と同じ問題を抱えている。イギリスでも、政治とNPOがどうかかわれるか。それから企業とNPOがどうすみ分けられるか。さっき言った企業化したNPO、これの問題が、今、非常に大きく問題になっているが、しかしむしろ制限するほうじゃなくて、ブレア政権の側は、むしろ企業とNPOが相互交換的に、企業がNPOをつくる、NPOが企業をつくるということを促進していく方向に動いていくべきではないかというようなことをおっしゃっていました。ただ、そこはイギリスでも非常に論点になっているところだと聞いています。

これはアメリカでも論点になっているところです。アメリカのNPOが、企業とどうすみ分けしていくかということは非常に論点になっていて、例えば最近ですと、地域のスポーツ施設からYMCAが訴えられる。あれはもう企業じゃないかと訴えられるということが起こっているそうです。こういう状況が一つあるんです。

 

 

 

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