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それから、雇用問題におけるNPOへの注目ということで、最近、新聞はほとんど雇用問題なんですが、「失業者対策でNPOに脚光」(日経新聞1999年7月1日夕刊)という記事。「歓迎と懸念、背中合わせ」(中見出し)ということで、歓迎派と懸念派に分かれると。私は、どちらかというと懸念派なんで歓迎派ではないんですが、失業対策でNPOを活用、これは誤解が生んだ政策であると書いてありますが、これは、さっき言った政策決定のプロセスを聞いていると、アメリカのNPOはという話から来るらしいですね。政策決定者の話をずっと聞いてきたある新聞記者の話によると、結局、アメリカにはNPOが60万、70万もあって、GDPの7%に達して、雇用も8%も生み出して、非常に雇用吸収力があったじゃないか。日本でも、雇用吸収力があるだろう。日本にはどれだけNPOがあるか。8万6,000団体ある。8万6,000でも、今からきっと伸びるに違いないという話がされたらしいんですね。しかもNPOというのはボランティア。安くて働くボランティアでいて、最低賃金以下でも働いてくれるんだと。だから安くてもいいんだという議論がなされて、その混乱の中で、今回、NPOが脚光を浴びたんだと聞いています。つまり、雇う側からすれば、かつての失業対策のように直接雇用しちゃうと、いざというときに切れない。NPOで間接雇用すれば切りやすい。しかも間接雇用をして、NPOだと最低賃金を下回っても大丈夫。それで失業者が減るんだったら、これにこしたことはないという議論が実際にされたんですね。

これは、かなり誤解の生んだ政策以上の何物でもないなと思っています。NPOの雇用吸収力は、実際、8万6,000ある団体でどれぐらい雇用吸収力があるかというと、これは先程の、「日本のNPOの現状について」(巻末資料7)の2ページ目ですが、「日本の狭義のNPOの現状を理解することが重要です」と書いていますが、1997年、経済企画庁の調査によるとということで、この8万6,000の実態は何かと書いています。予算規模1,000万未満の団体が全体の8.6%である。独自の事務所を持つ団体が全体の1.8%。常勤有給スタッフのいる団体が全体の8%。そのうち3人以上の常勤スタッフがいる団体は全体の7%と。これが経済企画庁の調査なんですね。雇用吸収力といっても、まず事務所がなくては雇用吸収もあったもんではないだろう。それから、1人いる団体が1人雇うって、結構大変なんですね。3人以上いないと、雇用吸収力とは言わないだろうと。すると実際には、ベースとなる雇用吸収力のある団体というのは、全体の2%ぐらいなんですね。

 

 

 

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