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そのために、統計が全然違ってきているんですね。最近、よく言われるのが、例えば雇用問題でNPOが注目されていますが、日本にはNPOは8万6,000あると。アメリカには、NPO団体は約60万から70万ある。それでGDPの7%を満たして、全雇用数の8%を満たすと、新聞記事なんかですぐ見ますね。しかし、これは多分1]と2]の中間を言ってるんだろうと思うんですね。はっきりしたデータの数字はわからないですけど、多分、レスター・サラモンのグループの統計からすれば、2]に近いけれど2]ではない。学校とか病院とかを入れた数字ではかっている。市民活動団体だけをダイレクトに比較するのは無理があると思うんです。その無理な数字を、無理やり当てはめて、アメリカのNPOという虚像をつくっているために、どうも日本のNPOという議論が宙に浮いているというのが今の現状で、それがますます大混乱を招いているなという気がします。

それから、あとNPOの概念の混乱の中で、非営利と無報酬ということの概念の混乱も大きいです。非営利と無報酬がどう違うかというのに関して言えば、「ボランティアとNPOの比較表」9というのがあります。非営利と無報酬の違いは、要は、NPOがボランティア団体だと思われている方がまだ多いんですね。そのために、お金を取るということに対して非常に反発を食らう。非営利なんでしょう、お金は取らないでしょうという話になるんですが、非営利というのは、団体がもうけても、利益が出ても、それは活動の目的に使う。もうけなくてOKだよという話ですね。利益の非分配を指しているのが非営利という概念です。それに対して無報酬というのは、個人が労働対価を得ないことが無報酬です。非営利というのは、団体に対して使う概念であって、無報酬というのは、個人に対して使う概念というあたりが、これ、矛盾しない概念なんだよということが理解されていないんですね。

そのために、最近、出てきたのが企業化するNPOとそれへの反発ということで、例えば介護保険でNPOが参入するとなったときに、一方では、自治体など参入を歓迎するセクションもありながら、かなり自治体のほうから強固に、NPOなのになぜもうけを取るのか。つまり安くやりなさいという指導が来ているというのが現状です。これは介護保険だけではなしに、多くの公共施設を利用する際にも、例えば参加費を取ったらだめだとか、いろいろと料金を取ってはならないという指導が来ているところです。

 

9 巻末資料8参照。

 

 

 

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