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ですから、そういう戦略の中には、国民側がやはりちゃんと機能するような体制も必要ではないかなと、全ての国策に対していつも思います。最も必要な説明は、まず内側からというふうに痛感しているんです。それに日本の国民は、救助があればずっと平和でいられるようなというのがいまだそういう会話が、いろいろなところでされていますし、政治家の方々もそこは避けてお話をなさる機会が多過ぎるのではないかと思っております。

 

神谷 多分、ご発言を本当に正確に理解したかどうか、ちょっとわからない部分もありますが、恐らく、お考えと私が思っていることは同じだと思います。国民に説明ということを今日の話の中では申しませんでした。けれど、自らの進路を自らが決めると言っているときに、何も一部のエリートだけがそうするというのではなくて、私のイメージとしては、国民というのもかなり抽象的な言い方ですが、ともかく精神としては、国民が決める。

ですから、例えば、今、日米同盟基軸路線で行くというのはさしたる反対もなく、冷戦後について承認されて、ガイドライン関連法案も通っています。でも、わけが本当にわかって、積極的に支持している人が何人いるかと言うと、甚だ心もとない。だから、支持は幅広いけれど、非常に薄いと私は外国の人にはどう思うかと言われると、言うことにしてます。これは、非常に困ったことです。

なぜ、そうなってるかというと、日米同盟基軸は、自分で選んだという気がまるでしていないからではないかと思います。ですから例えば、その路線を決めるに当たって、少なくとも形だけでも幾つかのオプションが示されて、それについてそれぞれの利害・得失が説明されて、まあどうやらこの道が一番いいらしいというふうに、漠然とでもいいから皆が思ったということがあれば、どれほどよかったかと思うわけです。

その際には、まだタブーかもしれませんが、軍事的にも自立するとどうなるという話もしてみせる。一方で、逆の側の極論は、多分、多国間協調に全てを賭けるというやつだと思います。これを選ぶとどうなりそうかということも言ってみる。非常に雑ばくに言うと、日米同盟基軸と併せて三つです。もしかしたら、中間形態もあるかもしれません。三つないし四つ、五つぐらいのものを出して、その中で、やっぱりどう考えてもこれ(日米同盟基軸)が一番だと思いますけど、いかがでしょうというようなことがあってしかるべきだったし、いろんな意味で、実は、冷戦が終わって、ソ連が退場したときはそのチャンスであったはずですが、それがなかった。

軍事中級大国なんて言葉は使っていませんけれども、日本は軍事的には大国というか、自立を目指さないという決定は、実は、北新防衛大綱と日米安保の再定義で、日本は、実は明示的にいつの間にかやっちゃったわけです。これは、非常に困ったことかもしれないなと。そういうふうな道を選んだのだという意識は、防衛庁、外務省の一部の人にあることは承知しておりますけれども、政治家レベルだと一体、何人にあるのか。非常に心もとないことばかりだと思います。

 

司会 どうもありがとうございました。ご出席の皆様の活発な議論を伺わせていただきましたので、非常に内容の濃い討論になりまして、どうもありがとうございました。

また、ご案内を差し上げますので、よろしくお願いいたします。

本当に、本日は長時間、どうもありがとうございました。

 

[文責事務局]

 

 

 

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