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やっぱり私の方に具体的に知識がないものですから、ついもやもやとなってしまうところを明確に言っていただくと非常にありがたいです。専守防衛は本当に北朝鮮みたいな国に対してつらいんです。私は、専守防衛というのは変な言い方であって、できたらその基本精神は残して言葉は改めたほうがいいようにも思う。その場合には、非挑発的防衛という言葉が北欧なんかで生まれて、今、世界的に受け入れられていて、オーストラリア人のアンドルー・マックという今は国連事務総長の特別補佐官か何かで安全保障問題をやっている人が、日本の専守防衛は非挑発的防衛をアジア・太平洋国家の中で唯一具体化しつつあるものだと褒めている。ちょっと褒め過ぎかもしれませんが。基本的には同じ精神だと思います。

ただ、非挑発的防衛と言うときには、専守防衛ではないんです。相手がとんでもないやつである場合には、それなりに対処する余地がある。原則としては専守防衛と同じでしょうが、例外的な国に対してはそれなりに対処する余地を残す。もしかしたら、そういうことが必要なのかなという気も個人的にはちょっとしなくはありません。

それから、アメリカが血を流してくれるかという問題は、実はこれからかなりまじめに出てくる可能性のある話だと思っています。これは、あまり単純に受け取られると日米同盟はないほうがいいとか、意味がないという話のように聞こえてしまうかもしれません。そうでないことを最初に申し上げた上で言っておきます。例えば、冷戦期の西ヨーロッパは、アメリカと同盟関係があってアメリカの核の傘の下にあった。しかし、アムステルダムのために、一体、アメリカはロサンゼルスか何だったかを犠牲にしてくれるかという議論がすでにあって、一体、本当にアメリカは、いざと言うときに犠牲を覚悟でやってくれるだろうかという心配があった。

ところが、日本の場合は、日本だけが単独で侵略されるということは冷戦時にはあまり現実性がなかったために、そういうことをまじめに考える必要は多分なかったんだと思います。北朝鮮の話が出てきて初めて、レベルは随分低いですが、だから冷戦期のソ連の話と同程度に考えるとむちゃくちゃな過大評価になります。しかし、レベルは低いけれど、初めて例えば日本が単独で核攻撃を受けるとか、あるいは日本が核と言わないけど武力攻撃を受ける可能性が、ある程度現実的な可能性として出てきて、そこで拡大抑止のクレディビリティみたいな問題の出る可能性が出てきている。

そこへ、昨今アメリカは戦争をしても一兵たりとも失いたくないという考えを非常に強く出しているということがどう影響してくるか、在韓米軍が一体人質になってしまうのか、そういう難しい問題が、むにゃむにゃむにゃとあるように思います。

 

 

 

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