それぐらい多分、根本的にいろんな認識がズレているんだと思います。そして、枠組み合意以来、日本だけではどうしょうもない問題がいろいろ出ていますから、確かに日本が原則を自分だけで貫くのは大変です。
実は私がフォーサイトなどに書いたものの中では明示的に述べてありますけれども、北朝鮮が協力的な態度を取らないときは、日本は協力をやめてほっとけ、というのが私の意見ですが、その際に多国間で合意したものについては対象外にする。多国間で合意した分は別にして、日本独自では北朝鮮に何もしてやらない、ということで行くしかないのではないかと思います。
ただし、最近、韓国もどうも太陽政策とは言っていますけれども、「フォーサイト」の記事が出たころとはだいぶ様変わりして、相互主義という言葉が出てきています。相互主義ということなんです、TIT FOR TATとか「目には目を」、私が申しているのは。ですから、韓国でも太陽政策よりは相互主義のほうがというような流れになってきているのでないかと、内心は心強く思っていなくもないんです。
ただ、アメリカがあって、これは実は地理的に遠くにございますので、日本とおのずから考えが変わってくるわけです。話が突然飛ぶようですけれども、アメリカにとってはこれは遠い地域の問題で、日本にとっては隣の話。日米安保の話には、全般にそのギャップは常にあるということを忘れてはいけないと思います。北朝鮮問題では、それが特に微妙に深刻だと思います。どうすればいいかについてはむしろD先生に教えを賜わりたいぐらいのところです。
政策調整に妙案はあるのかというのは、私もよくわかりません。ただ、アメリカについて言えば、原則を明確に出してくる国についてはある程度それは尊重するというか、尊重はしなくても敬意は払うところがありますから、やはり日本がぐにゃぐにゃと何だか場当たり的にやっているよりは、我が国は基本的にはこれでいきたい。ただし、もちろん一人で我を張ることを常にはしないけどこれが基本的態度だ、ということをはっきりと打ち出すことにはそれなりの意味が出てくるのではないかと思っています。
それから中国は、例えば六者協議というものを金大中大統領も小淵総理も提唱しているわけですが、それに非常に強く反対している。もちろん、一つの大きい理由は日本の政治的影響力の拡大を望まないということです。それから、昨年のインド・パキスタンの核実験の後の会合でも、日本やドイツも加えてという案をけ飛ばしたのも、P5の特権的な会合はそのままで保ちたかったからだと言われています。