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しかし私の考え方は、まず東アジアの秩序を今後どうするか、その中で特に重要な日米中関係をどうするかということをまず考えたときに、どうも日本が「普通の大国」になることは好ましいことではない。しかし、日本が自立しないこと、あるいは米中にいつまでたっても対等の扱いを受けないこともどうも好ましいことではない。特にこの場合は日本にとって。そうだとすると、普通でない大国になるということがあり得るかどうかを考えてみる必要があるというので、軍事的にはミドル・パワーのまま我慢するということに積極的価値を見出したい。軍事的にメジャー・パワーになる道もあるんだけれど、それを我慢しているということを米中はじめとする諸国にアプリシエートさせられないか。

もし、それをアプリシエートされるとすると、日本は米中と対等になるのみならず、日本はそういう大国なんだということが認められるわけですから、そういう大国としての、「普通の大国」とは違う貢献の方式が出てくるだろう。それは、おのずから軍事力については、もともとミドル・パワー並みのものしか持ってないんですから貢献度がその程度でよくて、しかしその分、大国としての責任は別なところで補うというものになるんだろうと、後からその部分がきているつもりではあります。

それがよその国にどう受け取られるかという話です。私の理解する限りでは、中国及び韓国、それから北朝鮮について−北朝鮮をこういう場合に持ち出してはあまり建設的ではないですけれども−その三つを顕著な例外としますと、軍事的にミドル・パワーで日米同盟基軸路線を選ぶ日本が、大国的に役割を果たすということについては、リザベーション(reservation)は付きますけれども、ある種待望する声もある。特にヨーロッパなどアジアを一歩外に出ると、待望論は非常に強まる。それから、日本から遠いアジアに行くとやっぱり待望論がどちらかと言うと強まるという印象を持っております。

ですからこれも具体的に何をやるか次第であって、この辺は漠然としたことを言っていてもしょうがないので、多分、日本が私がこういうことをやりますと言ってみせたときの反応がどうなのかを見るしかなくて、そこで、下手をやらないように気を付けるのは、政治指導者、外務省や防衛庁をはじめとする官庁、あるいは、私ども、勝手なことを外野から言う者、あるいは報道する方々等の責務であると思うわけです。いずれにしても法律は抽象論なので、中身についてはもちろんいろいろ工夫をしないといけないと思います。その部分については、湾岸戦争以降、さまざま出されているアイデアから、いろんなものを参考にして引いてくることはできると思います。

 

 

 

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