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また、そういう意味での大国を目指すということが、我が国を取り巻く周辺諸国等の中でどういう影響を与えるのかなということもございます。

最後に、もう一つ。先生は、国家の理念としての軍事中級大国という話をされました。その国家の理念を追及していく一つの手段として軍事力を持っているけれどもそれを使わないで、大国ではあるけれども「普通の大国」ではないということを一つの手段として考えられておられたようです。

そういう大国というものを尊敬できる国と考えた場合には、そういうものは国際的な貢献を何らかの形でやってその後から付いてくる評価であって、その評価を先に、そういうもので求めていくというのは納得できないような気がします。いかがでしょうか。

 

神谷 うまく答えられるかどうかわかりませんが、日本が大国になるとかならないという話です。私は、大国もいろいろな意味がありますけれど、行動すること、あるいは行動しないことも同じです。する、しないは別にして、ある種の行動に関する選択が、周り、あるいは世界にいやでも応でも影響を与えてしまうような存在は大国と言うべきものではないかと思っております。漠然とした言い方になりますが。そういう意味では、日本はずっと前から能力的には大国だった。ただ振る舞いが大国的ではなかった。それは、かなりの程度、自分でそうしてきたところがあるのではないかと思います。

自らの思うように秩序をいじれる能力が獲得できるかどうか、特に軍事力なしでという話ですが、そこのところこそ、まさにある意味では、日本にとっての課題になっていくのではないかと思います。日本は、何かすること、あるいはしないことが影響を与える存在になっていて、そしてその力を活用していくべきだということになっている。さっきも申しましたように、もう8年ぐらい、もたもたしていて余力がなくなっていくと、こういう話は一切必要なくなるかもしれません。しかし今のところ、まだ日本は大国だと言われる。

能力を活用するに当たって、せっかく活用する以上はなるべく自分の意思で秩序に働き掛けるということも、多分できたほうがいいと思います。しかし、従来の常識ではそういうことをするためには軍事的にも大国でなければ無理だということになっていた。そこに別な道はあるだろうかという話だと思います。日本人はいろんな言い方でそれ以外の道を模索してきましたが、概して国際的な納得は得られていない。日本人が勝手に、自分のところはこうなりたい、と言っているだけというものだったと思います。

 

 

 

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