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ですから、私が軍事中級大国というときにイメージされる貢献の内容は、船橋さんがあそこに列挙されたようなことのかなりの部分が中心になっていくのではないか。つまり、大国は、世界秩序などに責任を持つ。あるいは世界をよりよくすることに責任をもつ。大国というものがいいことをすると仮定すればそういうことになるわけです。

その際に、もちろん軍事面、経済面、さまざまな側面がある中で、軍事面については関与をミニマムに止める。それ以外のところで活躍するわけですから、まさに民生部門中心ということになるのではないかと思います。

ただ大国と言えば、軍事的にも大国であるというか、大国並みの国力が付けば、軍事的にも当然、大国化するんだというのが、キッシンジャーとかブレジンスキーとかに代表されるアメリカにおける主流派、アメリカに限りませんね、欧米主流派の常識でありますので、大国であって軍事的には大国にならないことをあえて強調する。そんなことぐらいになります。

自立した日本が自らの進路を自らで決めると言ったって、そんな国が幾つもあるかと言われると、確かにそれはそんなにないですね。ただし今、いわゆる大国ないしそれに準ずる国というと、アメリカ、中国、ロシア、イギリス、フランス、日本、ドイツぐらいまでが本当のところです。サミットには、イタリアとかカナダとかいますが、こんなのは大国とは言い難いと思います。

そうすると、今の七つの国で、ドイツはまだちょっと怪しいところがございましょうけれど、P5の国はそれなりにそういうところがあって、日本もこれから先、国際社会で国力相応の役割を果たして尊敬されたいとか、これは、あらゆる立場の人が近年言うようになってますから、日本国民の多数の希望だと私は解釈しております。

そうだとすると、今や、日本はP5的な心構えを持たないと、多分だめなのではないか。大国並みの国力をこれから使って何かしていくというときに、自分で使い方についてちゃんと判断しているというところがないのではちっとも尊敬されっこないという話、問題意識です。

目的意識の欠如というと、安直だ。まことにその通りではあります。ただ日本の場合、特に外交というか安全保障のほうでは、何のためにということを言わな過ぎる。外交も実はそうです。さっき、国際協調が自己目的化していると言いました。ともかく協調が大事だとお題目のように、それこそ某新聞が繰り返していますが、某新聞に限らない。

 

 

 

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