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ただ、うちの国は小さいですから軍事的な外交はできませんから非軍事的貢献ですよ。皆さんもそう思うでしょうと。それで世界も納得しているわけです。ノルウェーが、湾岸戦争で兵隊を送っていたら、ごめんなさい、多分、送ってないと思います。ほとんど戦わなかったとしても、誰も文句を言わない。あの国はそういう国であって、そういう国としてやるべきことをやっていると皆が思っているからです。

日本の場合は大国である。とすると、大国というものはいざというときは戦争もするものだ、国際協力という名の下には。そういう常識が世界にあるときに、どうやって戦わない大国ということを認めさせるかというのが基本になっていくのではないかと思います。

さもなければ日本としては二つしか道はない。戦う大国になるか、それは私の言う「普通の大国」路線です。そうでなければ、尊敬されるとか、コ・オプティブ・パワーということは言うのはやめて、それこそアメリカ様にお世話になって生きていく。何か最近、アメリカのやり方には面白くないことが一層増えてきているような気もするけれど、それは言わない。これら二つの道のどっちもいやだとすると、現在日本がとっている道が日本の独り善がりでないということを何とかしてアクセプトしてもらうようにするしかない。

そのための理屈として、無理ではなくて、多分、一番普通に言えるのは、日本が「普通の大国」を目指すと周辺諸国が懸念するとかそういうことではなくて、(それによって力のバランスが急激に変わるので)日米中関係が不安定になる。それは非常によくない。そういうことではないかと思います。それが、一番基本です。

 

A 神谷先生がおっしゃる大国というのは経済の面から見た大国とか、あるいはポリティカル・インストルメンツという部分での大国とか、どういう概念での大国と理解したらよろしいんでしょうか。

 

神谷 ですから、経済とかを基本にした物理的能力があれば、まず能力レベルでは大国なわけです。ただ、それが実際の大国の地位につながるかどうかというのは次の問題です。能力的には大国である日本が、なぜ大国としての普通の行動様式をとろうとしないのか。とらないことが正当化されるのか。問題をまず何らかの形で解決しませんと、日本が独自の理念とか、文化というものをいくら訴えていっても、根本のところであの国はインチキだということになってしまうのではないかという気がします。

 

 

 

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