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ただし、よその国にも同じような考え方があるということを承認している以上、そこで言う国益は狭い意味での国益というよりは、広い意味での国益と最近われわれが呼んでいるものになるのだろうと思います。

はしょりますが、こういう中庸を得た健全なナショナリズムとそれに基づく国益感覚を持って初めて、次のような外交安全保障感覚を身に付けることができるのではないかと思います。それは、外交の基本的な目的が、広い意味での国益の追求にあることを認める態度が一番基本になって、その上で国益を実現するにはなるべくよその国の国益との間に折り合いを付けて、対立・対決は避けて協調していくことが大事だという態度が生まれる。しかし、お互い譲れない一線を持っている。それぞれが大事に思う文化や価値や常識の体系を持っている。並び立っている、どれが正しいということは決められないし、その上に立って、どれが優れているか決めてくれる世界政府もない。

そうだとすると、場合によっては自分の国益の主張が、よその国の国益の主張と決定的に対立することもあり得る。その場合には、協調では済まない。もちろん争いをエスカレートさせないことは大切であるけれども、毅然とした態度でもって自分の国の立場を主張し続けることがその場合には必要になっていく。

そういう感覚が取り戻せたとなると、私がさっきから言っている自立性ということも、おのずから高まっていくのではないか。どこが頭で尻尾だか最後のほう、話がわからなくなりましたが、もう一回ラップアップいたしますと、今後の日本は、私は外交といい、安全保障といい、いかにして、自立性を回復するかというのが基本的な問題だと思っています。

ただし、自立性を回復した日本が、改めて自分の進路を選んだとして、これはかなりハイポセティカル(hypothetical)な言い方で、実際には全てをちゃらにして一から選び直すということはできないわけです。ですから仮にそういうふうに(日本が改めて自立的に進路を選んだとして)したとして、今までと全く違う、何か素晴らしい、新しい道があると考えるのは幻想である。

ここでは、細かい点は全て省きますけれども、日本にとって賢明なのは日米同盟基軸路線ということにどうも変わりはない、少なくとも予見し得る将来においては。ただし、自立した日本があえてその道を選んでいるという認識を持つこと、そしてそれをよその国にもわからせるということが、恐らく非常に大切なことです。

それが、日本だけが勝手に自立すると言っているのではなくて、よその国にも日本が自立した、普通ではないけれど大国なんだということを認めさせていける鍵になるのではないか。

そして、そういうことができて初めて、よく日本で希望的に語られる日本は大国だけれどアメリカやイギリスやフランスのようにはやらない。日本の今までやってきた道を大事にして、そのやり方の延長線上で大国として貢献する。こういうことが初めて、国際的に認められたものとして可能になるということであります。

甚だ、まとまりがありませんが、以上です。

 

 

 

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