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自立への欲求がそういう形に集約されていってしまうと、日本にとっては、大変なディザスター(disaster)である。日本が目指すべきなのは、親米自主とでも言うべき路線であって、それを基軸にして親米自主のもとに、少し変な言葉ですが軍事中級大国、軍事的にはミドル・パワー、しかし大国だという大国に何とかしてなる。単に物理的にそうだと自己主張するのではなくて、それを世界に認めさせる。いわばこれは、普通の国にはなるけど、「普通の大国」にはならないという路線ではないかと思っております。

もちろん、そういうことを世界に訴え、受け入れさせるということは非常に難しいことであって、そのためには優れたリーダーシップと優れた外交技術が必要になります。このことをまじめに考えますと、どうも現在、あまり楽観的にはなれないというか、暗い話が多いような気もします。しかし、この辺は、日本人はやがて底力によってこういうものを取り戻すだろうと期待することにしたいと思います。期待しないと、やっていられないということであります。

最後に、さっき、日本にとって例えば国際協調を目指すといっても譲れない一線がなければいけないだろうと言いました。譲れない一線というものをはっきりさせて、それを大事にするということが、恐らく自立ということと非常に関係が深いだろうと思います。

譲れない一線とは何かというと、日本が非常に大事だと思う、かけがえのない価値体系、ものの考え方とか価値、そういうものの集大成としか言いようがないわけです。こういうものを大事にするというのが、まさにナショナリズムということだろうと思います。そうはいっても、相互依存が深まっている今日、ただナショナリズムと言ってもアナクロニズムみたいに聞こえるかもしれません。ここで私は、漠然とした言葉ですけれども「中庸を得た健全なナショナリズム」を獲得することが日本にとって必要ではないかと思っているわけです。

 

 

 

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