日本財団 図書館


日米関係においては、日米同盟の再定義は一段落したわけですけれども、今後アメリカとの協力関係を保ちながら、日本が独自の利益とか立場を主張していくことが課題になっていくだろうと思います。つまりアメリカと協力しつつ、いかに自立性を高めていくか。あるいは取り戻していくかというべきかもしれません。こういうのが、多分課題になるだろうと思います。

それから、日米中関係、本当は日中関係と言いたいところですけれども、日中関係はどうも単独では存在していないような気がしますので、米を入れて日米中関係と言うことにします。ここでも日本の自立性の回復が大きな課題になるように思います。日米中関係におきましては、「普通でない大国」としての日本が非常な困難に直面しているのが現状であろうと思います。アメリカ、中国は、極めて伝統的な大国の行動様式、あるいはものの考え方を持っている国ですが、軍事面では大国になれるけどならない。あるいは政治面でも、伝統的な大国の国際政治のやり方をやらないということで歩んでいる日本が、いかにこれらの国と対等に今後やっていくか。これは、非常に難しい課題だと思います。そのための鍵は、やはり日本が何らかの形で−アメリカとの協力をやめてしまうというのではなくて−自立性を取り戻すということではないかと思います。

それから、(日本が)アジア太平洋や世界で敬意を獲得してコ・オプティブ・パワーを高めるという話ですが、このコ・オプティブ・パワーはジョセフ・ナイの言葉で、一般にはむしろソフトパワーという言葉で知られているかもしれません。これは翻訳が難しくて、確か昔、高坂正尭先生の本では「互選的な力」と訳されていましたが、これでは学生に書いて見せても「何ですか、それ」と言われるのが落ちであります。訳しようがない。

ではコ・オプティブ・パワー(ソフトパワー)とはどういう意味かと言うと、軍事力や経済力で相手に言うことを聞かせる、自分の望みの行動を取らせる。あるいは、自分の好まない行動を取らせないというより、もっと微妙に知らず知らずのうちに、よその国が自分好みの行動を取り自分の好まないようなことはしないように仕向ける。それこそいちいちそうするのではなくて、文化の魅力とかイデオロギーや、理念の魅力とかそういうもので、じわじわとそういうふうにしていくという漠然とした力のことです。

軍事力、あるいは軍事力のみならず強制力は、大国であっても生々しい形ではあまり使えなくなっているというか、いつでも使えるとは限らなくなっている現代の世界においては、こういう力の重要性が高まっているだろうという話であります。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION