ODAの果たす役割の重要性、我が国の寄与に対する国際社会の期待、厳しい経済・財政状況、ODAをめぐる様々な国民世論を勘案し、適正な規模のODA予算が継続して確保されるよう検討すべきである。
提言5 ODAの質の向上、人材育成・知的支援の推進と関連体制の整備
今後ODAを供与するに当たっては限られた予算を効率的に活用していくため、ODAの質をより一層向上していく必要がある。特に、技術協力を用いた人材育成、法制度及び経済・産業政策形成のための知的支援は開発途上国の開発能力の向上及び国造りにとって重要な役割を演じるものである。そこで、相手国政府との緊密な対話及び知的支援のための共同研究を行うとともに、中長期的な視点から、相手国のニーズに的確に対処することが可能となるよう包括的なアプローチを一層促進していくべきである。
また、ODAの質の向上、とりわけ、人材育成・知的支援を図るためには、援助要員の確保が喫緊の課題であり、官公庁、民間を問わずノウハウを有する人材を確保するための体制整備を図ることが必要である。特に、国際協力事業団(JICA)を通じて行われている専門家の派遣については、関係省庁等からの専門家の派遣の仕組みが硬直的な状況に陥っているのではないかとの指摘がなされていること等にもかんがみ、専門家登録制度や専門家公募制度の本格的導入により、広範な対象の中から適切な人材の確保を早急に進めるべきである。
提言6 有償・無債資金協力・技術協力の連携の強化、多国間援助と二国間援助とのバランスヘの配意
我が国は、有償資金協力、無償資金協力及び技術協力の3つの援助手法を相手国の発展段階、要請に応じて組み合わせながら供与してきている。また、二国間援助は直接相手国に「日本の顔が見える援助」という特色を有し、さらに、多国間援助の場における我が国の寄与への期待は大きなものがある。
有償・無償資金協力・技術協力の連携をより一層強化し、適正かつ効果的なODAの実施に努めるとともに、食糧援助等の人道的立場からの支援、相手国の自助努力を促す効果を期待し得る有償資金協力の活用にも一層配意すべきである。また、我が国のODAの均衡ある発展を目指す視点から、多国間援助と二国間援助の適正なバランスの確保について検討を深めるべきである。