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青木 台湾系で香港映画の人気スターのスー・チーもいい感じがする。

東京は今後、どういう形でアジアあるいは世界において存在理由を示すことができるのか。そのポテンシャルみたいなものは、どういうところにありますか。まだまだ外国人の登用は薄い社会です。かつては2万人が来ていたのに、今は日本全体で5万人ぐらいですか。

 

山室 5万人を超えない。

 

青木 そうすると、東京で1万人か1万5,000人ぐらい。東京の人口は当時の400万ではなくて、今は1,200万か、1,300万人都市です。それでいくと、もっと30万人か40万人、50万人ぐらいいてもいいわけです。パリは人口は東京より少ないが、そのぐらいいるわけでしょう。

これからは北京や上海にしても、インフラも整備しつつあって、アジアでブームになる可能性があります。それから、シンガポールや香港も、別の意味で魅力あるところです。シンガポールや香港の理工科大学の教師も世界から高給で呼んでいる。

その中で東京は、成田空港から入りにくし、使いにくい、万事割高です。ホテルも高いし、サービスも悪い。アジアの大都市と比較すると、あまり将来性がないような感じがして残念です。安全神話もいま危なくなってきました。東京の特徴は何ですか。

 

川本 彼らが活躍する舞台を提供することです。木村拓也の映画を、日本人女性が、監督ではなくプロデューサーに回っていることが、今の日本の役割ではないかと思います。

 

青木 東京に、外国人タレントをこれだけ呼んできているわけだから、日本人はいい鑑賞者になって、かつてのロンドンのように、ハイドンとか、マルクスとか、自由に仕事をさせる。それはいまでも続く伝統でしょうが、ロンドンで仕事をして世界に名を成す非西欧系の作家や芸術家もたくさんいます。東京もそういう懐の深い都市に、果たしてなれるでしょうか。

 

川本 福岡市は、アジア映画の映画祭を毎年やっています。いいことの1つは、アジアの映画フィルムのアーカイブを福岡市につくったことです。アジアの国では、フィルムを保管しておくフィルムライブラリーが、まだ充実していないので、フィルムが散失したり、保存状態が悪くなる。それを福岡市が買いあげている。インドネシア映画やタイのフィルムを持っていたりする。おもしろい試みだと思います。

 

青木 フランスに小津の無声映画時代のプリントが全部あって、日本にはほとんどない。ニューヨークの近代美術館にも、小津の作品があります。ドナルド・リッチーが集めた。日本じゃなくてアメリカで見られる。これも東京の文化的損失でしょう。

 

人をひきつける都市の魅力

 

陣内 ミラノに10数年いて、デザイナーとして独立して活躍している教え子の女性がいる。ミラノはヨーロッパの中でも地理的位置がわりといいから、プロジェクトごとにフランス、ドイツ、スイスから人が来る。町が主宰する、9月に開くサローネ・ディ・ミラーノなど家具デザインの大きいイベントやフェアがある。ミラノ・コレクションも開催する。ビジネスで来るわけですが、本質的には太陽とおいしいもの、ホスピタリティーと、人生をエンジョイする価値があるから来る。その町が持っている経済基盤なんかを超えて、魅力が必要ですと、彼女は言っています。

ファッションデザイナーの山本耀司さんから聞いたのですが、パリは、近代化して、ファッションを支える基礎構造、職人さんとか、物をつくる人がいなくなっちゃった。ミラノが台頭してきたのは、分業化して、周りにつくる人たちがいっぱいいることだというんです。コーディネートする、あるいはプロデュースをする組織が地域ごとにある。ミラノの中心部でも、割合しっかりしていることが、ミラノ・コレクションが強い理由だというのです。それからファッションが好きで、消費動向も高く、センスもいい。

東京の場合、何によって人をひきつけるか。経済、ビジネスの中でも、どこかに特化した強い分野をつくって、わかりやすく発信できるかという2つを抱き合わせていかないといけないと思う。東京はイメージで動いていますからふらふらしている。ある時期は、金融都市、今はIT革命で、情報化都市。

 

 

 

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